「津軽伝承料理 人寄せの料理」(柴田書店)が8月3日、発売された。
弘前を中心に活動する料理研究ユニット「津軽あかつきの会」が2021年に刊行し、第7版となるロングセラーのレシピ本「津軽伝承料理」の発展編として手がけた同書。正月や盆、農事、人生儀礼といった、人々が集う「人寄せ」の場に焦点を当て、地域の食文化とその背景にある歴史を浮かび上がらせる。
前作は、同ユニットが長年蓄積してきた200以上のレシピをベースに、地域の気象条件や食の特性を描き出し、プロの料理人から一般の食文化ファンまで大きな反響を呼んだ。
著者の一人で編集者の小林淳一さんによると、前作の出版当時から前会長の工藤良子さんには「年取り、田植え、嫁入り、不祝儀などの行事の執り行い一式を記録として残したい」という願いがあったという。工藤さんの実行力と実現力に伴走する形で取材を重ね、今作の刊行が実現した。
同書のテーマである「人寄せの食事」は、単に大人数で集まって食べるためのものではなく、小林さんによると「仕事」を担う集まりでコミュニティとつながりを結ぶ機会だったという。「ガソリンや電力がなかった時代に、人々が仕事や風習、願いを共にし、津軽の暮らしの歴史的・文化的な『景観』を映し出すもの」とも。
小林さんは「1960年から1975年ころまで津軽地方に残っていたこれらの習慣は、機械化の発展によりほとんど姿を消した。核家族化や都市化が進む現在、一家がそろうことも少なくなり、結婚式などの人生儀礼における会場設営や料理の準備を専門業者に任せるのが当たり前になっている」と指摘する。
その上で、「本書は文化継承の定義を問い直す機会になる。作り手の技術を学ぶことだけが継承ではなく、『作り手が作る機会を増やす』こと自体が継承への実質的な貢献となる。書籍を手に取ること自体が文化継承への参加になるのではないか」と話す。
B5変形判、144ページ(オールカラー)。価格は2,860円。