青森・鶴田の縫製工場「エムズメイトコーポレーション」(青森県鶴田町)で現在、医療用防護服製造を急ピッチで進めている。
普段は大手アパレルメーカーの女性用ワンピースやブラウスなどを主に生産している同工場。同社社長の松本冴子さんによると、新型コロナウイルスの影響により婦人服の注文が減り5月の受注件数はゼロとなってしまったが、ツイッターで「大変です…助けてください」(原文ママ)と呼び掛けたところ3.3万ツイートと3万以上のいいねが寄せられて拡散し、医療用防護服の量産に至った。
エムズメイトコーポレーションは故・松本重昂さんが国内生産の手仕事にこだわった縫製工場を作りたいと2002(平成14)年に創業。同地は小学校校舎の一部を利用して作られた工場で、アパレル業界の営業職だった経験を生かして開設した。現在は妻のタケ子さんと娘の冴子さんが経営を担っている。
話題の発端となったツイートはアカウント名「あきさん」さんによるもの。 東京在住の学生である「あきさん」さんはタケ子さんの孫で冴子さんの娘。ツイッターは普段、趣味に使う程度だったというが、「ツイッターを使って困っている店などが救われたニュースを見て、やってみようと思った」と「あきさん」さん。
ツイートでは「医療用防護服を製造しています。注文があればいくらでも作ります!」(原文ママ)と発信。全国各地から問い合わせがあり、中小医療施設や養護施設、寄付に使いたいといった個人の相談までさまざまな方面からメッセージが寄せられたという。
冴子さんは「実は、医療用防護服を作ってみてはと提案されたのも娘からだった。軽い気持ちで提案したようだったが、何もやらないよりはやった方がいいとすぐに試作を始めた」と振り返る。
東京在住の冴子さんは工場のある青森とは週単位で行き来する。工場スタッフには4月下旬に医療用防護服を提案したが、スタッフから反対意見はなく、言葉も少なかったという。「反応が薄かったため、難しいかもしれないと感じたが、約2日後には試作品が完成していた」と話す。「女性用のアパレルしか作った経験のない現場は手探りだったはず。そんな中でも短期間で作ったことに津軽の職人魂を見た」とも。
次に発生した問題は、必要としている場所を探すことだった。つてがなく行き詰っていたところ、「あきさん」のツイートが生まれたという。「ネットの力には驚くばかり」と冴子さん。
現在、月産約6000枚のペースで製造を行っており、仕上がり次第発送していくという。冴子さんは「少しでも仕事を作り、社会の役に立てればという思いで始めた。現在、母は今回の一件で体を壊して療養中。母や娘に代わり、ネットを通じて応援してくれる人たちに感謝を伝えたい」と話す。