弘前の居酒屋「わらじ屋」(弘前市本町、TEL 0172-36-1178)が4月15日、SNSを使った情報発信を始めた。
地域食材を使った料理と地酒中心の日本酒を提供する同店。雑居ビルの中にありながら古民家風の内装が売りの店内は、床以外が1984(昭和59)年開業当初のまま。2013(平成25)年公開の映画「奇跡のリンゴ」のロケ場所として使われ、出演者のファンたちが通った時期もあったという。
現在は下山良二さんと初子さん夫婦で店を切り盛りする。「新型コロナウイルスの影響に伴う弘前さくらまつり中止と、外出自粛による売り上げ減少で大きな危機感を覚えた」という2人の長女・相馬由貴さんは「父は携帯電話を持ったことがなく母はやっとガラケーを持ち始めたような2人。黙っていてもどうしようもない」と、店を宣伝するためにSNSを立ち上げた。
「当初はあの2人がSNSを始めたの?といった驚きの声もあった。とはいえ私自身もやったことはなく、失敗は多かった」と相馬さん。4月15日の初投稿ではハッシュタグの使い方を間違え、ビルのオーナーから指摘されたという。「周囲の人たちに教えてもらったり他店の発信方法を研究したりしている。実際に会った人には『始めました』と営業しフォロワーを増やした」とも。
テークアウト需要の高まりからテークアウトメニューを作るように助言したのも相馬さんだった。当初はオードブルのみというメニューだったが、1人前の提供や人気メニュー「カレイの唐揚げ」のテークアウトできるようにしたという。「父は職人かたぎで生真面目。新しいことには疎いが私のことを聞いて順応しようとしている」と相馬さん。
相馬さんは現在、弘前に隣接する五所川原在住で介護の仕事と子育ての合間にSNSの更新を行っている。弘前に来るのは休みの日曜のみ。店や料理の写真はその時の撮りためておく。SNSからの注文やお問い合わせがあれば、内容を初子さんに電話やショートメールで確認し、回答しているという。
初子さんは「娘がSNSで発信したことで新しい客層が来店するようになった。今までは常連客の口コミや紹介だけで店をやっていくことができたが、今は違う。生き残るためには私自身も勉強していかなければ」と話す。
相馬さんは「SNSを始めたことで最初に助けてくれたのは周囲の仲間でした。父と母が35年以上にわたって築いてきたお客さまとの温かさに感動しました。新型コロナウイルスで閉業なんてことにはならないように支えていきたい」と意欲を見せる。