久渡寺(くどじ、弘前市坂元)で6月16日、円山応挙(まるやまおうきょ)の真筆とされる幽霊画が1時間だけ限定公開された。
久渡寺が所蔵する幽霊画「返魂香之図(はんごんこうのず)」は、弘前藩の家老・森岡元徳が亡くなった妻たちを供養するために円山応挙に依頼したもので、2020年から行われた弘前市文化財審議委員の調査で明らかになった。現在は市認定の有形文化財となっている。
公開は1年に一度、旧暦の5月18日に当たる日に12時から1時間だけ一般公開する。公開日は毎年雨になるといわれるが、この日は晴天。約30人の見物客が訪れ、焼香をした後に仏間へ入り、思い思いに手を合わせて幽霊画と向き合う時間をつくっていた。
弘前市立博物館で5月8日まで開催されていた企画展「弘前の文化財」で幽霊画を鑑賞した50代女性は「美術品として鑑賞することと供養として拝むこととでは気持ちが異なり、何より見え方が違った」と話す。公開していた13時に間に合わず、見ることができなかったという50代女性は「久渡寺に向かっている間、霧のような小雨が降った。幽霊画が今年も公開されたんだと感じた」と笑顔を見せる。
住職の須藤光昭さんは「今年は幽霊画を貸し出したことがあったが、当寺での公開は1年に一度だけ。じかに見ることができる貴重な機会。供養という気持ちで幽霊画と向き合うことで、それぞれの心の中に何か発見があれば」と話す。