青森・大鰐の「正観湯(しょうかんとう)温泉旅館」(TEL 0172-48-3000)が施設修繕のため支援者を募集したクラウドファンディング・プロジェクトが8月6日、呼び掛けから3日間で目標額を達成した。
現店主の横山紀子さんの祖父・愛太郎さんが温泉を掘り当て、大衆浴場として1974(昭和49)年に創業した「正観湯温泉」。1979(昭和54)年には横山さんの父・安則さんが旅館として営業を始めた。
安則さんは「あんちゃん」の愛称で親しまれ、オートバイ好きだったことから「ライダーが集まる宿」として全国から宿泊客が訪れるようになった。紀子さんは「父は闘病の末に昨年他界したため、私が旅館を継ぐことになった。数年前から修繕の準備はしていたが、コロナによる宿泊客の減少と老朽化による修理費が重なり、資金に困り始めていた」と話す。
当初修繕するのは脱衣場と浴室だけで工事は6月下旬からスタートする予定だったが、今年5月に源泉を汲み上げるポンプと源泉を温めるヒートポンプが故障した。温泉に関わる機械だったため、修理を優先したが、修繕費を支払いに当ててしまったという。「存続が危ぶまれた中での挑戦。心苦しい気持ちでのクラウドファンディングだった」と横山さん。
リターン品は、3,000円~10万円で10種類を用意。1年間入浴無料券や12泊無料宿泊券、宿泊に来られない人向けに「大鰐温泉もやし」やリンゴジュースなどの特産品、地元民向けに日帰り入浴券などをそろえた。
目標額は250万円。クラウンドファンディング支援は8月3日から呼び掛けた。「達成できなければどうしようといった不安もあったが、3日で目標額を達成できた」と笑顔を見せる横山さん。「全国から支援をいただいて感謝しかない。今後はネクストゴールの設定も考えている」とも。
同旅館では現在、新型コロナウイルスの感染拡大により、戻り始めていた宿泊客の予約キャンセルが相次いでいる。横山さんは「父が築いた当宿を、全国から集まる『人と人とが出会う場所』として、これからも残したい。コロナの終息が見えないため、いまだに安心はできないが、日常が戻って来た時に皆さまをまたお待ちしていたいため、皆さまのご支援がとてもうれしい」と話す。
同プロジェクトの支援募集は9月5日11時まで。