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弘前の老舗旅館がコロナ禍でピンチ 経営者姉妹がCF支援呼び掛け

次女の三輪静香さん(左)と長女の赤石香織さん(右)

次女の三輪静香さん(左)と長女の赤石香織さん(右)

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 弘前の老舗温泉旅館「山のホテル」(弘前市常盤野字湯ノ沢、TEL 0172-83-2329)が現在、クラウドファンディングサイトで新型コロナ影響による経営建て直しのための資金支援者を募集している。

客に「トド寝」してもらおうと企画した畳風呂

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 津軽富士・岩木山の嶽温泉にある同旅館。創業は1674(延宝2)年といい、現在は8代目社長の赤石芳江さんが、長女の香織さん、次女の三輪静香さんと一緒に経営を切り盛りしている。クラウドファンディング・プロジェクトは、コロナ禍で宿泊客が見込めず、運営資金と老朽化した設備費用の補填(ほてん)に充てようと香織さんと三輪さんの姉妹で企画した。

 新型コロナウイルスの影響は3月に入り深刻化していったという。2018(平成30)年に先代社長で姉妹の父・勝美さんが他界。売り上げは落ち込んだが、翌年カフェバーを新設し、主催イベント開催や畳風呂の導入、SNSを使った広報に力を入れるなど、新しい取り組みに着手。売り上げは好転に向かっていたという。香織さんは「青森の人気ユーチューバーにも紹介され、(新型コロナ感染の全国拡大は)今年こそはと意気揚々で取り組んでいた直後の出来事だった」と振り返る。

 旅館は4月13日から休業し、全面営業再開は7月1日を予定している。現在は貸し切り風呂の受け付けと看板メニュー「マタギ飯」のテークアウト販売のみ行っている。香織さんは「スタッフや家族の健康を第一に考え、休業は早くに決めた。命があれば何度でもやり直せる」と話す。

 「クラウンドファンディングは当初、乗り気ではなかった」と香織さん。「お客さまをおもてなしするのが私たちの務め。お客さまから支援をいただくことには抵抗があった」と明かす。一方、周囲の後押しや協力もあったことから決意し、5月16日に支援募集を始めたという。

 始めてみたところ、旅館に直接訪れる支援者や、利用したことがない県外の人から支援を受けたという。香織さんは「支援金だけでなく何よりメッセージがうれしかった。『自分がいつか行く時まで残してほしい』など、胸に刺さる声がたくさんあった」と笑顔を見せる。

 リターン品は当初5タイプを用意。現在は10タイプを用意している。香織さんによると、多くの人が喜んでくれるようなリターン品を用意してみてはとのアドバイスから増やしたという。「目玉の100万円はマタギ飯を365日食べられるというプラン。実は直接の支援者がいて、実際にマタギ飯を配送した」とも。

 「クラウドファンディングを始めたことで、新しいファンとのつながりや勇気をもらうことができた」と香織さん。「休業中は終わりの見えない状況に廃業することも脳裏に浮かんだが、頑張って旅館を残していこうという自信を持つことができた」と話す。新たな取り組みにも挑戦しようと、三輪さんと2人で生配信するユーチューブチェンネルも開設した。「評判は気にせず続けていきたい」と笑顔を見せる。

 支援締め切りは6月27日23時59分。達成金額は6月23日現在、目標金額の47%。香織さんと三輪さんの2人はラストスパートに賭けたいと、最終日にユーチューブの生配信を予定しているという。「最後のお願いをする。目標金額は達成しなくても、皆さまと一緒に時間を共有し、コロナ後もつながれるような関係を築けたらうれしい」と目を細める。

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