青森・弘前で12月2日、「どうする子どもたちのスポーツ環境は?~青少年スポーツ環境フォーラム~」が開催された。主催は「スポネット弘前」。
人口減少や少子化、保護者の共働き、教師の多忙などにより、子どもたちのスポーツができる環境がなくなりつつある現状を話し合う同フォーラム。スポネット弘前の鹿内葵さんは「青森は他県より深刻。地域住民みんなで一緒に考えたい」と話す。
基調講演では、群馬県内初の総合型地域スポーツクラブを2000年に立ち上げ、地域に関係なくスポーツができる環境を作る「新町スポーツクラブ」の講師・小出利一さんが「子どもたちのスポーツ環境の将来像は?」と題して話した。
小出さんは、現在の小学5年生の運動能力は過去の年長と同レベルであるデータやドイツのスポーツ環境を事例に海外と比べて紹介。「スポーツの二極化が進み、やらない人とやる人の格差が生まれている。スポーツ本来の楽しさを伝え、底辺拡大に取り組まないといけない」と話す。
基調講演後のシンポジウムでは、小出さんと鹿内さんのほか、弘前市文化スポーツ振興課の粟嶋博美さんと弘前市スポーツ少年団会長の小山内剛さんが登壇し、それぞれの立場から意見を交わした。
粟嶋さんは市が2016年度に実施した保護者など3392人から集めたアンケート結果を発表。スポーツ少年団には、「勝利至上主義に偏っている」「保護者の負担が大きい」「指導者不足」といった問題があることを明かし、少子高齢化の進行が著しく、課題はますます深刻化することを指摘した。
小山内さんは、スポーツ少年団の団員数が10年間で4割以上減少し、団の数も減り続けていることを紹介。「種目も減り、郊外では団体スポーツもできない子どもたちがいる。スポーツをする機会はますます無くなっている」と話す。
2人の発表を受け、小出さんは「勝つことをステータスにする指導者や風潮があり、子どもたちがスポーツを楽しめず、保護者の負担が増えるケースもある。プロで活躍する有名選手の8割は子どものころからその競技だけをしていたわけではなく、楽しんでいた経験を持つ。スポーツの全国大会を熱心に実施して勝敗を決めているのは先進国で日本くらい」と話す。
鹿内さんはスポネットの活動を紹介。高杉や船沢、三省といった郊外では児童数の減少などによってスポーツをできる環境がなくなりつつあったという。スポネットでは複数の学校から児童を集めてスポーツをできる取り組みを実施し、交通手段といった課題はあるが、スポーツ種目が増えて気軽にさまざまな体験が可能になったと報告した。
フォーラムを終え、鹿内さんは「スポーツを通じて子どもたちに何を得てもらうかが問われている。東京五輪や青森では2025年に国体が開催される予定で、華やかな一面にスポットが当たっているが、現状は深刻で子どもたちのスポーツができる環境は減り続けている。広域型スポーツ少年団といった、よりスポーツができる新しい仕組みを考えなければいけない」と結んだ。