リンゴの小さい品種「アルプス乙女」の市場価格が今年、約3倍に高騰したことが、弘前経済新聞編集部の調べで分かった。
アルプス乙女は一般的なリンゴよりサイズが小さく、酸味が強い品種。食べやすい大きさから、祭りや縁日の屋台で販売するりんごあめに使われる品種だが、今年は平均市場価格が昨年に比べ約3倍に高騰した。高騰は市場関係者を驚かせている。
高騰の背景にあるのはコロナ禍によるりんごあめ需要の低迷だったと分析するのは、弘前のりんご市場を取り扱う弘前中央青果りんご部の工藤兼人さん。「外出やイベントの自粛で祭りも全国的に中止となった。アルプス乙女の需要が少なくなったため、コロナ禍でアルプス乙女の栽培をやめた農家が多かった」と話す。コロナによる自粛がなくなり、祭りは再開されるようになったが、アルプス乙女の生産量は上向かず、市場価格が高騰したという見立てだ。
東京を中心にりんごあめ専門店の出店が盛んで、「進化系りんごあめ」などと若年層にブームとなっていることも背景にあると工藤さん。「進化系と呼ばれるりんごあめに使われている品種は主にふじのようだが、アルプス乙女などの小さいりんごの引き合いは強い」とも。
弘前で「アルプス乙女」を栽培している40代のリンゴ農家は「直接買い付けに来る業者もいるという話を聞いたことがある。うちも、今年はボーナスでも入ったかのような金額で買い取ってもらい驚いた」と笑顔を見せる。
高騰は続かないのではという予測もある。市場関係者の一人は「アルプス乙女が高騰したことで、りんごあめの販売をやめる屋台が増えるのでは。最近はりんご以外のシャインマスカットやイチゴといったフルーツあめが人気とも聞く」と話す。「アルプス乙女はりんごあめ以外の需要がほぼないリンゴ。祭りの再開を見込んだ需要が相場を高騰させたが、引き合いが弱まれば価格は落ち着く」といった声もあった。