青森にある「古遠部(ふるとおべ)温泉」(平川市碇ヶ関)が現在、事業継承者を募集している。
1984(昭和59)年創業の温泉宿で、秋田との県境近くの山間エリアにある同施設。温泉愛好家からは「トド寝」ができる秘湯の温泉として知られ、2012(平成24)年に旅行新聞新社主催の「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で選考審査員特別賞に選ばれた。
同施設社長の木村達夫さんによると、55年以上前に木村さんの父が別荘として建てたのが始まりで、温泉は鉱山の試掘で噴き出たことからだったという。木村さんは東京で会社員を経験した後、40歳でUターンし、旅館の開業を決意。別荘を改修し、温泉宿としてスタートした。
木村さんは現在79歳。2021年に交通事故にあい、体の限界を感じ始めたことが宿をやめる決意のきっかけになったという。「温泉を廃業するつもりだったが『やめないでほしい』という多くの声が多くあった。申し訳ない気持ちが大きく、事業の継承を考えた」と木村さん。
譲渡する古遠部温泉の敷地面積は100坪、3階建てで客室数は7室。温泉の湧出量は毎分500リットルという。「約40年の営業で湯量は常に安定している。湯治客もいるが、気持ちよくてなかなか出てこない入浴客もいる」と話す。
温泉宿の譲渡金額は1,500万円。木村さんは「例えば夫婦2人の家族で始めることができれば、十分に経営できるのでは。40年以上関わった宿。譲渡後もアドバイスやお手伝いはしたい」と話す。
当初は3月に閉店する予定だったが、5月末まで営業を続ける。木村さんは「年齢的に厳しく、あと一年あと一年と続けてきた。ありがたいことに地元だけでなく全国から常連客が訪れるようになった。そんな常連客が安心できるような人に譲りたい」と話す。