弘前市内のラーメン店やそば店では5月中旬から「中華ざる」の提供が始まる。
「中華ざる」は青森を中心に東北地方で提供される夏のメニュー。ラーメンの中華麺を冷やしてそばつゆで食べる。北東北に発祥があるといわれているが諸説あり、起源は分かっていない。弘前市内では冷やし中華と並べて夏季に提供する店が多い。
「銀水食堂」(弘前市新鍛冶町)では5月21日から店先に「ざる中華 冷やし中華」の看板が立て掛け、提供を開始した。「熊っこラーメン 青山本店」(弘前市青山)ではゴールデンウイーク明けから「中華ざる」の提供を始めた。店主の青山忠光さんは「中華ざるは気温が20度以上になる初夏から始め、冷やし中華はその後。真夏になれば中華ざるより冷やし中華の方が売れる」と話す。
そば店「一力(いちりき)」(富田)では5月21日から「冷やし中華」を始めた。「中華ざる」はメニューに記載がなく、「ざる」(750円)の中に含まれ、注文を受ければ提供する。3代目店主の加藤孝雄さんによると、津軽地方の戦前から続くそば店では戦後にラーメンを提供するようになり、その麺を流用して「中華ざる」になったのではないかという。
「冬になると弘前では特にざるそばは売れなくなるため、収入の柱として温かいラーメンを出すようになった。中華ざるはメニューにないが、お客さまから言われて出すようになった。当店は学校が近いため子どもの来店が多く、子どもはそばより中華麺の方を注文する」と加藤さん。
1907(明治40)年創業の老舗食堂「三忠食堂」(和徳町)4代目店主の黒沼三千男さんは、中華ざるが開業当初からあったメニューではないという。「73歳の私が、中学生の時にまかないで食べた記憶がある。店のメニューとしていつから出し始めたのは定かではないが、まかないを見たお客さまから要望があって提供を始めた」と話す。
「当店は中華ざるを通年で提供している。ラーメンとそばを提供しているため、中華麺にそばつゆで提供するだけなので、在庫を増やす必要がない。そのためそば湯もつける。冷やし中華は例年どおり6月に入ってから始める」とも。