弘前を舞台にした漫画「ふらいんぐうぃっち」をきっかけにツイッターアカウント「たやなおき」さんが3月31日、弘前に移住した。
「ふらいんぐうぃっち」は2012(平成24)年から「別冊少年マガジン」(講談社)で連載が始まり、現在までに9巻を発行。横浜から青森にやって来た15歳の魔女・木幡真琴が、居候先の親せきたちと過ごす日常が描かれ、作中には弘前周辺の風景や習慣が紹介される。2016(平成28)年にはアニメ化した。
たやさんは関西出身で、大学卒業後に東京で就職。アニメや漫画が趣味といい、作中の舞台を巡る「聖地巡礼」も楽しんでいたという。たやさんは「アニメ化されることを機に初めて弘前を訪れた。2015(平成27)年のことで、いろいろ回っていた聖地の一つとしか当時は思っていなかった」と振り返る。
「移住すればいいのに、と冗談ではよく話をしていたが、本当に移住するとは自分自身でも考えてもいなかった」とたやさん。アニメ化によってファンが増え、「聖地巡礼」をする人も多くなったが、アニメ放送後にブームは落ち着き、このまま静かになっていくことがファンとしていたたまれなくなったという。
「魔女教会弘前支部」を立ち上げたのはアニメ放送後。地元の人たちと立ち上げた市民団体で、イベントに「ふらいんぐうぃっち」のねぷたを出陣したり、冬の弘前公園で開催される雪灯籠まつりで雪灯籠を出展したりと、「ふらいんぐうぃっち」熱を継続したいと、その都度、弘前を訪れ、活動を通じて地元住民たちとの交流が深まっていった。
プライベートでは仕事を10年近く続けて充実していたが、モチベーションを保つことに苦労を感じるようになっていた。「自分のやりたいこと、続けたいことを見つめ直した時に『ふらいんぐうぃっち』を通じて好きになった弘前や青森があった」とたやさん。
移住は昨年夏を予定していたが、新型コロナウイルスのため保留となったが、逆に移住の気持ちに背中を押されたという。「さくらまつりやねぷたまつりなどが中止となり、地元の人たちが地元の飲食店などを応援する企画が増えていたが、自分は東京にいて何もできないことが歯がゆかった」と明かす。
現在はリンゴ農家の仕事を手伝いながら、人脈作りや生活に慣れることから始めている。畑での農作業帰りに岩木山などの青森の景色を眺め、移住したことに充実感を覚えている。「きっかけはアニメでも漫画でもいい。地元民との交流の中で、その土地やそこに住む人たちの魅力を感じ、移住を決めるには十分だった」とたやさん。
今後の目標は、「ふらいんぐうぃっち」を活用した観光コンテンツの創出やポップカルチャーを生かして青森を盛り上げることだという。たやさんは「アイデアはたくさんあるが、まだ夢物語。自分にできることを一つずつ考え、形にしていきたい」と意欲を見せる。