日本産農作物の輸出事業を手掛ける「日本農業」(東京都品川区)が現在、青森県産リンゴの海外販路拡大を目指す取り組みを行っている。
「攻めの農業」をコンセプトに、日本の農作物を東南アジアなどの海外へ販売している同社。2016(平成28)年に24歳だった内藤祥平さんが中心となり、高校や大学の同級生に呼び掛け法人を設立した。立ち上げメンバーの一人、河合秋人さんは青森エリア担当として2017(平成29)年から弘前に移住し、リンゴの生産から出荷までを手掛けている。
河合さんによると、日本農業が現在事業展開しているエリアは全国に2カ所。山梨のシャインマスカットと青森のリンゴだという。それぞれのエリアにはスタッフを配置し、青森には現在、関東圏から8人が移り住んでいる。
「はじめはリンゴの作り方すら知らなかった」と河合さん。訪ねたリンゴ農家で話を聞いてもらえないこともあったという。河合さんは「津軽弁が分からない時もあった」と振り返る。
同社では海外の消費者の好みを考え、小玉に特化したリンゴを作る高密植わい化方式で栽培を行っている。「生産から流通までを手掛けることで在庫を管理しやすく、全体のプロセスの効率化も図れる」と河合さん。耕作放棄地を自社農園として活用するほか、現地の果樹農業経験者を中心に雇用し、栽培や摘果作業などの効率化を図り生産量拡大を目指しているという。
現在、同社が輸出している青森産リンゴはインドネシア、タイ、フィリピンで現地シェア1位を占めており、台湾や香港への輸出も進めているという。「Essence(エッセンス)という自社ブランドで日本の農作物を流通させ、タイでは常設棚を500店以上で確保している。それぞれに現地スタッフが常駐し、リモートでの打ち合わせを中心に行っている」と河合さん。
8月21日は今年の作業員への説明会を行った。集まった作業員約20人は主婦や学生などが中心で、生活に合わせ働きやすいシフト制の環境に引かれて応募した人が多くいたという。この日は説明会の後、実際にリンゴの選果作業を行った。
河合さんは「日本の優れた農作物を世界に届ける新しい販路を開拓するだけでなく、ライセンスビジネスを推進することで、メード・イン・ジャパンの品種を保護し、『もうかる農業』に転換していきたい」と意欲を見せる。