特集

【弘前の未来を考えるvol.4】シードル作りとりんご産業の課題に取り組む
百姓堂本舗:高橋哲史さん

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【弘前の未来を考えるvol.4】百姓堂本舗:高橋哲史さん

人口減少、少子高齢化、空き家対策…。これらの問題は一つの分野に止まらない。今後の社会にとってさまざまな影響を与える課題として山積している。それは青森も同じ。むしろ東京といった都市圏より進行は早く、問題は深い。

りんご産業もまた農家の高齢化や後継者不足、耕作放棄地といった問題に直面し、今後の対策に迫られている。若手りんご農家らで結成した農業法人「百姓堂本舗」の代表・高橋哲史さんはこれらの課題を少しでも解決しようと、弘前で活動を続けています。「Next Commons Lab 弘前」は、新規就農者を増やす仕組みの構築やりんごの商品開発を促進するといった両面で、高橋さんと新たに募集する起業家と協力しながらりんご産業の未来を見据えた事業をつくっていきます。

【弘前の未来を考えるvol.4】百姓堂本舗:高橋哲史さん

----弘前でのこれまでの活動を教えてください

実家の家業を継ぎりんごを作りつつ、百姓堂本舗でシードル工房「kimori(キモリ)」を立ち上げ、自分たちのりんごを使ったお酒・シードルを醸造しています。

キモリを立ち上げた大きなきっかけは、2008年に発生した凍霜(とうそう)・雹といった自然災害でした。りんごは少しでも傷があれば市場で安価に取引されてしまい、流通させることも難しくなります。その年の被害で廃棄されるりんごを見て、生食以外で流通させる六次産業化の必要性を感じました。

kimoriシードル

----これまでの活動の中で、どのような可能性を感じていますか?

海外需要の増加からりんごの取引価格は現在、全体的に上向いています。明るい話に見えるかもしれません。しかし、りんご産業は農家の高齢化や担い手不足が大きな課題で、生産量は緩やかに減少しています。今後、りんごの高騰による消費の低迷や人出不足によって、産業としては縮小することが十分に予想されています。

りんごは青森県の基幹産業です。その産業が縮小していくということは、この地域全体の低迷にもつながってしまいます。キモリを立ち上げたのは、これらの課題に取り組むことも目的にありました。りんご産業を発展させていくことは、青森全体の活性化に直結していくと考えています。

弘前シードル工房kimori

----プロジェクトにどのような思いや狙いがありますか?

新しい就農者の支援が本プロジェクトの目的の一つですが、農家を増やすことだけが、りんご産業にある課題の解決ではありません。りんご産業の今後を多角的に考え、どのように繁栄させていくか。もちろんその中には、商品開発といった六次産業化という方法もあります。

りんご農家の仕事ぶりを魅力的に発信することも必要になるかもしれません。作業の効率化を図ることでりんごの生産量を増やすこともできますし、耕作放棄地などを活用しやすくする仕組みづくりが課題の解決につながるかもしれません。産業全体を俯瞰で考えて長期的に見据え、少しずつでも動いていくことが狙いにあります。

弘前シードル工房kimori

----プロジェクトのやりがいや苦労はどのあたりにあると思われますか?

りんご産業のことをくわしく知ってもらうため、まずは農家と一緒に畑で働き通年で行われる作業を覚えたり、市場での競りや地元民の生活も経験したりして、青森の暮らしを知ってもらいます。もしかすると生活面で苦労があるかもしれませんね。

青森でりんご産業が100年以上続き、世界に誇れる栽培技術と味、そして市場を形成することができたのは、変化し続けたからでした。従来どおりの方法や価値観に従っているだけでは、これからの時代に残していくことは難しく、外から来た人だからこそ、私たちが気づいていないことや発見があり、それらを生かした提案を発信してほしいです。りんご産業に新しい変化を生み出し、作っていくことにやりがいを見出せると思います。

弘前シードル工房kimori

----一緒に活動する起業家に期待することを教えてください

矛盾はしていますが、起業を目的としたりビジネスだけをやるといったりした意識では事業としての限界があるのはないでしょうか。もちろん大切な意識ではありますが、他業種や自分のこれまでの経験をりんご産業に応用できるような人を期待したいです。

実は私はりんごに興味がありませんでした。親からも農家を継いでほしいと言われたことがありません。高校を卒業後は映画づくりに憧れて青森を離れ、東京でテレビの制作現場で働いた経験もあります。しかし、今では青森のことを考え、りんご産業の未来を考えるようなプロジェクトを立ち上げようとしています。青森やりんごというよりは、未来を一緒に考えてもらう人を期待したいです。

【弘前の未来を考えるvol.4】百姓堂本舗:高橋哲史さん

弘前シードル工房kimori

 

高橋哲史(たかはし・さとし)
1973年、青森県弘前市生まれ。高校卒業後、日本映画学校で映画を学び、映像製作の仕事を経てUターンし就農。2012年に株式会社百姓堂本舗を立ち上げる。kimoriは2014年度グッドデザイン賞を受賞。漫画「あしたのジョー」を読み、「自分は真っ白な灰になるほど燃え尽きているか?」と戒め、「燃え尽きて真っ白な灰になることを夢見てる」という

 

Next Commons Lab 弘前とは?

Next Commons Lab(以下、NCL)は、地域リソースに対する事業創出などを目的とした、マルチセクターによる活動プラットフォームであり、新しい共同体です。NCL を立ち上げるために、地域リソースの発掘と可視化、セクターを超えたパートナーシップ、起業家の誘致と支援、地域での拠点整備など、さまざまな施策に取り組んでいます。各地にNCL を立ち上げ、それぞれの地域に沿ったプログラムを実践しながらネットワークすることで新たな社会インフラを整備し、コミュニティ間のネットワークと人材や知見の流動性を高めることで、より自由な生き方を選択できる社会を目指しています。

NCL弘前は「まち全体をキャンパスにする」をコンセプトに、多様な人が集い、知識や経験、技術を持ち寄り、成長する場所、自己実現の場所、革新が起きる場所としてあらゆる場所がキャンパスになることを目指します。 暮しと仕事の実践の中から、世代や立場を越えて学び合い、あたらしい価値とまちの未来を創造します。

» Next Commons Lab

プロジェクトパートナー紹介

» 1.青森→アフリカ→東京、そして弘前。地域を結ぶ コーディネーター:石山紗希さん
» 2.新しい流通のあり方に挑戦する ひろさきマーケット:高橋信勝さん
» 3.究極の地産地消を目指す料理人が醸造するワイン オステリア エノテカ ダ・サスィーノ:笹森通彰さん
» 4.シードル作りとりんご産業の課題に取り組む 百姓堂本舗・高橋哲史さん
» 5.弘前をアートのある街にする Uターンしたまちづくりプランナー:盛和春さん
» 6.地域社会の未来のため、活躍できる人材を育成 コラーニングスペースHLS弘前:辻正太さん

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