特集

【弘前の未来を考えるvol.3】究極の地産地消を目指す料理人が醸造するワイン
オステリア エノテカ ダ・サスィーノ:笹森通彰さん

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【弘前の未来を考えるvol.3】笹森通彰さん

人口減少、少子高齢化、空き家対策…。これらの問題は一つの分野に止まらない。今後の社会にとってさまざまな影響を与える課題として山積している。それは青森も同じ。むしろ東京といった都市圏より進行は早く、問題は深い。

テレビや雑誌などのさまざまメディアから注目されるだけでなく、豪華寝台列車「トランスイート四季島(しきしま)」の沿線を代表するシェフにも選ばれたイタリアンレストラン「オステリア エノテカ ダ・サスィーノ」の笹森通彰さん。イタリアまで修業へ行き、地元弘前での開業のため帰郷。地産地消にこだわるスタイルに弘前の新しい未来があるのかもしれない。「Next Commons Lab 弘前」では、笹森さんとともにワインづくりに挑戦する。

【弘前の未来を考えるvol.3】笹森通彰さん

----弘前での関わりを教えてください

料理を始めるきっかけになったのは、イタリア料理店でアルバイトをしたことでした。当時は仙台の専門学校に通学しており、実家のある弘前を離れ、今まで当たり前に食べていた食材がおいしかったことに気づきます。実家では畑があったため、そこで採れた野菜などをよく食べていました。

専門学校卒業後も料理の道を進み、28歳でイタリアへ渡りました。イタリアでは4店舗のレストランで経験を積み、30歳の時に帰国。東京と仙台、そして弘前で出店を考えましたが、地元で自分の畑で採れた野菜や地産の食材を使った料理を提供したいという思いが強く、最終的に弘前としました。

地産地消にこだわったOSTERIA ENOTECA DA SASINOでのお料理

----弘前でワインづくりを行い、どのような可能性を感じていますか?

ワインの醸造を始めたのは2010年です。弘前市に働きかけ、自分の店であれば自家製のワインが提供できるというハウスワイン特区となった年でもあります。今年は8シーズン目となりますが、ワインづくりに前例のなかった弘前でさまざまな品種に挑戦。現在はネッビオーロという品種を扱っています。ネッビオーロはイタリアでは最高品種にあたり、「ワインの王様」とも呼ばれる「バローロ」などのワインに使われています。

ネッビオーロは日本で生産している農家はまだ少なく、品種として高いポテンシャルを持っています。コンテストでは上位を狙っていけるようなワインを作っている自信はあり、弘前が世界から注目されるような可能性も秘めているのではないでしょうか。

ワインの醸造を始めた

----ワインづくりにどのような思いや狙いがありますか?

現在、私の畑は津軽富士・岩木山の麓に1.2ヘクタールの広さがあります。醸造設備は整い、生産量も安定させることができればワインの一大産地としての期待も十分あります。弘前をワインの産地として世界に発信できるようになれば、ワインツーリズムで国内外からも観光客を呼び込むこともできます。

ロケーション最高のブドウ畑

そのためにも「Next Commons Lab 弘前」とのプロジェクトを一過性のものとせず、その先もワインづくりに携わる人を増やしていきたいですね。そして、同じワインを作る仲間として、弘前で続けてもらうことが理想ではあります。

----ワインづくりのやりがいや苦労はどのあたりにあると思われますか?

ワインづくりは自然との戦いとなります。ブドウの収穫量は、その年によって不作だったり豊作であったりと安定させることは難しいです。また、農作業だけをしていればいいというわけでもなく、醸造するための機械の修理やメンテナンス、わからないことは自分で解決しなければいけないこともあります。新しい挑戦には苦労はつきもの。おそらくこれからも多々あると思います。

しかし、自分で作ったワインが高い評価を得られたり、何十年先の後世に残せたりするかもしれないことは、最大のやりがいとなり、ワインづくりの醍醐味ではないでしょうか。

ワインづくり 農作業

----ワインづくりに一緒に取り組む起業家(プレイヤー)に期待することを教えてください

ワインが好きという気持ちが何よりも大切。自分で作ったブドウでワインを作れる喜びを感じてほしいです。そして、ワインのためならどんな努力も惜しまない。そんな強い気持ちや思いを持っている人であれば、一緒に仕事がしたいですね。私自身、自分のお店にワインが出てくる蛇口を作ったくらいのワイン好きですので。

そして、ハウスワイン特区にしてもらい私が最初の適用だったため、地元弘前に恩返しがしたいという思いも私にはあります。東京ではなく弘前を選んだ理由に、住みやすい環境で仕事がしたいということ、そして地産地消にこだわる料理を提供したいという考えがありました。こういった考えに少しでも共感してもらえる人がうれしいです。

オステリア エノテカ ダ・サスィーノ:笹森通彰さん

OSTERIA ENOTECA DA SASINO
pizzeria DA SASINO

 

笹森通彰(ささもり・みちあき)
青森県弘前市出身。高校卒業後、仙台の専門学校へ進学。在学中にイタリアンレストランでアルバイトをしたことがきっかけとなり、料理の道を進む。農水省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ブロンズクラスやJAPAN CHEESE AWARD部門別銀賞最優秀部門といった受賞歴を持つ。趣味は海釣り、クラシックカー乗り

 

Next Commons Lab 弘前とは?

Next Commons Lab(以下、NCL)は、地域リソースに対する事業創出などを目的とした、マルチセクターによる活動プラットフォームであり、新しい共同体です。NCL を立ち上げるために、地域リソースの発掘と可視化、セクターを超えたパートナーシップ、起業家の誘致と支援、地域での拠点整備など、さまざまな施策に取り組んでいます。各地にNCL を立ち上げ、それぞれの地域に沿ったプログラムを実践しながらネットワークすることで新たな社会インフラを整備し、コミュニティ間のネットワークと人材や知見の流動性を高めることで、より自由な生き方を選択できる社会を目指しています。

NCL弘前は「まち全体をキャンパスにする」をコンセプトに、多様な人が集い、知識や経験、技術を持ち寄り、成長する場所、自己実現の場所、革新が起きる場所としてあらゆる場所がキャンパスになることを目指します。 暮しと仕事の実践の中から、世代や立場を越えて学び合い、あたらしい価値とまちの未来を創造します。

» Next Commons Lab

プロジェクトパートナー紹介

» 1.青森→アフリカ→東京、そして弘前。地域を結ぶ コーディネーター:石山紗希さん
» 2.新しい流通のあり方に挑戦する ひろさきマーケット:高橋信勝さん
» 3.究極の地産地消を目指す料理人が醸造するワイン オステリア エノテカ ダ・サスィーノ:笹森通彰さん
» 4.シードル作りとりんご産業の課題に取り組む 百姓堂本舗・高橋哲史さん
» 5.弘前をアートのある街にする Uターンしたまちづくりプランナー:盛和春さん
» 6.地域社会の未来のため、活躍できる人材を育成 コラーニングスペースHLS弘前:辻正太さん

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