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青森の田んぼアート、今年は「スター・ウォーズ」 4つの制作過程の裏側

茅を使って植える稲の色別エリアを区分していく。田舎館村の職員が中心となって手作業で行う

茅を使って植える稲の色別エリアを区分していく。田舎館村の職員が中心となって手作業で行う

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 青森県田舎館(いなかだて)村の田んぼアートが「風と共に去りぬ」「スター・ウォーズ」に決定し、村民たちの準備が本格的に進み始めている。

第1田んぼアート「風と共に去りぬ」の下絵。斜めから見ると、立体的に見ることができる

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 色の異なる稲を作付し、巨大な絵を描く田んぼアート。同村では1993年から始まり、今年で23回目となる。「花魁(おいらん)」や「マリリン・モンロー」、「風神雷神図屏風」といったテーマから、2012年からは第2会場を設け、「ウルトラマン」や「サザエさん」とコラボした田んぼアートなども展開。他地域の田んぼアートより緻密に描かれることから「日本一の田んぼアート」とも言われ、昨年は天皇皇后両陛下が視察し、話題となった。

 今年の題材は4月28日に、第1会場は映画「風と共に去りぬ」、第2会場は「スター・ウォーズ」と発表された。同村企画観光課の浅利高年さんは「最新作が今年公開されるスター・ウォーズとコラボすることは夢のようだ」と話す。ネットでは「早く見に行きたい」「スター・ウォーズ好きにはたまらない」といった声が上がり、関心の高さがうかがえる。

 「田んぼアート制作には大きく4つの工程がある」と浅利さん。田んぼアートの下絵を描き、下絵を元にCADを使って設計図を作り、設計図を元に実際の田んぼに稲を植えるエリアをつくり、そして稲を植える。これらの作業を全て同村の村民が行う。

 もともと同村の役場職員だけで始めた取り組みだった。稲作が盛んな同村で、農業の面白さをより多くの人に知ってもらうために始めたという。当初は文字や図を題材にしていたが、2003年に人物画に挑戦しようと計画。現在も下絵を担当する山本篤さんは「相談があった時、その場で描いたモナリザの絵がそのまま採用された」と振り返る。山本さんは同村出身で美術の教諭。翌2004年からは遠近法を使い、展望台からでも立体的に見えるような田んぼアートになった。

 CADを使い設計図を作る工藤浩司さんは2008年の「恵比寿様と大黒様」から携わるようになった。それまで職員たちが四苦八苦していた設計図の作成を、測量会社に勤めていた工藤さんが請け負うようになる。「実際に稲を作付する間隔は10センチ。細かすぎても田んぼアートとして表現ができなくなる。山本先生の下図を簡略化していけるかが重要」と苦労を明かす。工藤さんは「澄高」という名でねぷた絵師としても活動しており、「田んぼアートの次はねぷたの絵を描かなければいけない」と笑う。

 「風と共に去りぬ」の田んぼアートは現在、役場職員を中心に1日40人体制で植える稲の色別エリアを区分していく「ポイント」作業を行っている。5月31日には村内外から公募した約1600人による田植えが行われ、6月1日から一般の観覧が始まる。実際に稲が育ち、見頃となるのは7月中旬~8月上旬だという。

 「スター・ウォーズ」の田んぼアートは下絵の確認中で、現在アメリカのルーカスフィルムまで確認を行っている。「ジョージ・ルーカスさん本人まで確認していただけているとうれしい。できれば本人の目で見頃の田んぼアートを見てほしい」と浅利さん。下絵は6月上旬に公開を予定しており、6月9日、10日には地元の農家や学生に協力を得て田植えを行う。観覧の開始は6月20日からとなる。

 「今年はキャラクターだけでなく、背景にまでグラデーションが施されており、今まで以上の力作」と工藤さん。「『ポイント』の数が増えすぎると、作業のために土を固めてしまい、稲が育ちにくくなる。『ポイント』をギリギリまで削ったが、スター・ウォーズもたいへんな作業になりそうだ」と苦笑い。「年々注目度が高くなっている。今年も村民一丸となって多くの人を受け入れたい」と浅利さんは意気込みを見せる。

 観覧期間は10月12日まで。入場料はそれぞれ200円(小学生以下は100円、未満は無料)。

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