コロナ禍での営業を続ける弘前の飲食店を追った。
「Pub Grandpa(パブ グランパ)」(弘前市土手町)では、2年前に比べ売り上げが8~9割減少。店主の中松久二さんは「数字が一桁違う」と嘆く。弘前では昨年10月、繁華街で大規模クラスターが発生。休業要請が市内の飲食店に広く及んだ。
「当時は協力金もあり、助けにはなった」と振り返る。今年3月までの売り上げは回復傾向にあったが、3回目の緊急事態宣言と青森県でも感染者が増え始めたこととが重なった4月から再び売り上げが減少。4月の弘前さくらまつりは開催されたもののゴールデンウイークは県外からの観光客が来店することで地元客が自粛してしまうのではと休業を決めた。
中松さんは「ありがたいことに店を続けてほしいと食事券をたくさん買ってくれるなど、応援してくれる常連客がある。少人数のグループで頻繁に利用してくれたりもする」と感謝を述べる。
中松さんは姉妹店を含めると8人の従業員を抱えている。コロナ後の通常営業を見込み、人材は確保しておきたいと言う。中松さんは「コロナが収束したらしっかりと営業できるような態勢を確保しつつ今は営業を続けるしかない」と話す。
「DOTECAZI(ドテカジ)」(土手町)は昨年からテークアウトに力を入れ、5,000円以上の購入客を対象にデリバリーも行なっている。6月7日からテークアウトメニューにおにぎりを追加。店主の對馬和輝さんは「アイデアを出し合いながら一緒に店を守ることができるのは、スタッフに恵まれているおかげ」と話す。
同店は現在、通常営業を続けているが20時以降の来店が見込めず、仕方なしに早じまいすることもあるという。對馬さんは「営業するだけ赤字だが、休んでしまうとうわさが気になるし、客が離れていきそうで怖い。昨年はテークアウト需要もあり、なんとか続けられていた。何より先も見えないことが不安」と話す。「5月の売り上げは過去最悪だった」とも。
それでも昨年から続けているテークアウトが店の知名度を高め、新しい集客に結びついたところもある。SNSでの情報発信も頻繁に行い、客とのコミュニケーションの機会を増やしている。對馬さんは「おいしいものを届けたいという一心で続けている」と苦しい中で笑顔を見せる。
弘前駅前周辺では閉店が相次ぐ。2月には、27年続いた「津軽居酒屋 わいわい」が姿を消した。5月には休業していた「日本海庄や 弘前駅前店」ものれんを下ろした。
駅前にある「Hirosaki Rice Wine(ヒロサキ ライス ワイン)」(駅前町)は昨年10月から予約のみの営業となり、現在のところ通常営業のめどが立っていない。
5月30日には、店主の吹田昌子さんがSNSで呼び掛け、周辺6店のテークアウト商品を集めて販売する「ひろさきテイクアウト合同まつり」を企画した。15分で当日販売分が完売するなど好評で、第2弾を6月12日に予定している。
吹田さんは「どこも現状は厳しく、暗い雰囲気を少しでもみんなが楽しんでもらえる企画を考えた。購入客から、こんな企画を実施してくれて『ありがとう』といった言葉をもらうこともあり、開催できてよかったと感じる。イベントでみんなが楽しめることはもちろんだが、早くこの現状が好転して、活気が戻ってほしい」と力を込めた。