千葉・南房総にある民宿「海辺の料理宿 政右ヱ門(まさえもん)」に1月31日、弘前本町郵便局の消印で匿名の現金書留が届いた。
政右ヱ門店主の堀江洋一さんによると、届いた現金書留には、「昨年の新聞の記事をよみました。少しばかりですが、お役に立てて下さい。」(原文ママ)と書かれた手紙と現金2万5,193円が入っていたという。消印は1月29日、弘前本町となっており、堀江さんは「弘前とは縁がなく、宿帳から探してみたが、過去に弘前から宿泊した人もいなかった」と話す。
堀江さんによると、昨年の新聞とは9月9日に掲載された朝日新聞ではないかという。「弘前の人が読んだのであれば全国紙。新聞には『コロナ追い打ち』と題し、一昨年の台風15号の被害から立ち直りつつあったが、コロナ禍によってさらなる苦境に立たされていることを伝える記事だった」と堀江さん。
堀江さんは南房総観光協会の会長を務め、仲間たちと台風の被害からの復興を目指すキャンペーンやイベントに取り組んだ。売り上げは回復傾向になったが、コロナによって再び突き落とされ、宿泊のキャンセルが相次ぐ。廃業が頭をよぎるほどだったという。堀江さんは「今の状況は苦しいが、千葉から800キロも離れた、見知らぬ土地の心温かい人からのお気持ちに心から励まされた」と話す。
キャンセル料を現金書留で届くことはあるが、今回のように匿名の人から手紙と現金が届くのは初めて。金額にも覚えがないという。堀江さんは「感謝を伝えたいが、匿名としている以上、本人の特定をしたいわけではない。ただこの気持ちがその人に伝わってくれればうれしい」と話す。
「お金とお手紙は神棚に飾り、本当に使う時が来るまで、家宝にしていきたい」とも。