青森のリンゴ農家の間で11月16日以降、「100%蜜りんご」のSNSでの発信や投稿が相次いだ。
発端は青森・黒石で実家がリンゴ農家という「Barter」さんが11月16日に投稿したツイートで、収穫した100%蜜の入ったリンゴを投稿したところ、13万リツイート、82万5000のいいねが寄せられたほか、海外からもコメントが届くなどの反応があった。
同投稿は、青森のリンゴ農家の間にも広まった。SNSなどを使って「自分は3年前に見た」「わが家にもありました」と発信する農家がいたが、一様に出荷することなく捨てるものだとし、中には「銀葉(ぎんよう)病のリンゴがどうしてバズるのか」と疑問視する農家もいた。
青森県産業技術センターりんご研究所(青森県黒石市)の福田典明さんは「銀葉病は樹皮の切り口などにムラサキウロコタケと呼ばれる子実体が形成することにより、文字通り葉が銀色に光る葉が発生したり、蜜が入りやすくなる『みつ症』といった症状が出たりするリンゴの病気」と話す。
福田さんによると、リンゴの蜜入りが市場に出始めたのは昭和40年代初めだったのではと推測する。「確定したことは言えないが当センターの資料を調べたところ、昭和40年に初めて蜜について触れている記述があった。蜜入りは当初『(味が)ボケやすく貯蔵性に劣る』とマイナスの評価だった」と福田さん。
昭和40年代に、流通していたリンゴの品種が紅玉や国光(こっこう)からデリ系と呼ばれるスターキング、ふじとなった。「蜜が入りにくい紅玉や国光から蜜の入りやすいふじがリンゴを代表する品種となったことで、消費者の間では蜜入りがリンゴのおいしさの象徴のようになったのでは」と福田さん。一方でリンゴの蜜入りを歓迎しない農家も少なくない。
福田さんは「リンゴは現在、光センサーなどの機械を使って選果される。蜜が多いと日持ちしないことからすぐに出荷に回され、蜜が少ないリンゴは貯蔵用に回される。その選果によって蜜入りリンゴは年内から年明けあたりまでに消費されるリンゴとして流通する」と話す。「欧米では貯蔵性が低いため蜜入りリンゴは生理障害として扱われる」とも。
味に関して福田さんは「味覚は個人差があり、明確な言及はできないが、農研機構の調査によると、蜜入りはないものと比べて糖度に違いはないが、香り成分であるエチルエステル類が多く含まれているため、おいしいと感じる人もいるのでは」と話す。
りんご研究所ではリンゴの蜜入りの程度を示す指数が「0~4」まで5段階で分けられている。福田さんは「今回のような100%の蜜リンゴはどのランクにも当てはまらないので、もし報告書などに書く場合は特記事項として扱う」と話す。