「ビームス」(東京都渋谷区)が現在、天然生ゴム素材で作った青森・黒石の「ボッコ靴」とコラボした商品「ボッコサボ」を販売している。
「ボッコ靴」は老舗靴店「Kボッコ」(黒石市横町、TEL 0172-52-2181)が作る天然ゴム100%の長靴。雪上用としてリンゴ農家や地元猟師などに愛用されていたが、安価なゴム靴が流通して1980年代には一度姿を消したという。同店店主の工藤勤さんによると、ボッコ靴を復刻させたのは2005(平成17)年。復刻には10年を要したという。
「ネットに情報があるわけがなく、現物もほぼ見つからなかった。天然ゴムを手に入れることすら困難で、当時の職人から型紙を聞き出したり、取引のあった業者と接触したりすることで、少しずつ復刻にこぎ着けた」と工藤さん。
ビームスのレーベル「ビームス ジャパン」とのコラボは2012(平成24)年までさかのぼる。東京・六本木で開催された展覧会「テマヒマ展〈東北の食と住〉」で、ボッコ靴を初めて知ったというビームスジャパン・ディレクターの鈴木修司さんは「天然ゴムだけという原始的な造りで、冬の厳しい環境の中で使われるボッコ靴に人々の知恵と温かさを感じた」と話す。
「昨年春に取り扱いの相談をしたところ、ご快諾いただいた」と鈴木さん。工藤さんは「実は天然ゴムが手に入らなくなり、4年くらいは受注を止めていた。昨年から製造を再開し、ボッコ靴を待っていた人たちに作り始めた矢先の提案でうれしかった」と振り返る。
昨年12月下旬には靴の甲の部分を富士山のモチーフにしたほか、デザインを一部変更したオリジナルの「Kボッコ×BEAMS JAPAN」を発売。販売直後にはスリッポンタイプの「ボッコサボ」を作れないかと相談されたという。「作ったことがない靴を作るという新しい挑戦だった。型紙から始め、試行錯誤の連続だった」と工藤さん。
製造は全て手作りで、工藤さん一人でこなす。ストーブの熱を利用してゴムを柔らかくするため、夏は作業場が暑くなる。冬は寒さによってゴムは硬くなり、夏とは違った難しさがあるという。工藤さんは「接着剤は使わず、生ゴムを溶かしたもので接合する。裏地も使わず天然ゴムのみで作られた靴は保温性や耐久性に優れている」と自信を見せる。
鈴木さんは「ボッコサボはガーデニングや外履きとして日常使いできるような新しい形。『青森県の銘品』として販売していきたい」と意欲を見せる。
価格は2万6,400円。ビームス・オンラインショップほか、ビームスジャパン新宿、渋谷、京都店で販売する。