
「ラーメン華心(はなしん)」(弘前市中野)が6月30日、閉店した。
西弘商店街にあり、大盛りでリーズナブルな価格で町中華を提供する同店。同日の昼営業で閉店した。店主の石澤周二さんは「1990年代後半から開業し、今まで続けられたのはお客さまのおかげ」と話す。
石澤さんは10代で青森を離れ、大宮や浦和の中華料理店で働く。20代前半には青森に戻り、弘前第一ホテルや鍛冶町の中華店で働いた後、独立した。「路面店で駐車場があればやっていけると考え、同地に出店した」と石澤さん。
開業当初から大盛りだったわけでなく、学生の利用客が多かったことから、次第にボリュームを増やしていった。米は直接農家から仕入れているため、近年の米価高騰の影響は少なく、閉店の理由は、自身の高齢化と入居している建物の老朽化にあるという。
石澤さんは「退去してほしいという相談は数年前からあり、今まで引き延ばしてもらった。移転も考えたが、自分自身の体力と仕入れ先の米農家も高齢化で今後米の供給が難しくなりそうな課題もあったため、閉店を決めた」と話す。
石澤さんによると、当初は静かに閉店する予定で、閉店は常連客や取引先などにしか伝えていなかったが、口コミで広がり、問い合わせの電話が増えてしまったため、6月に入りSNSで閉店を告知したという。閉店の情報は県外在住の卒業生らにも伝わり、連日行列ができるようになった。材料がなくなり、営業時間を短縮する日もあった。
学生時代に通っていたという30代女性は「まさに青春。華心の最期を見届けるために会社を休んで食べに来た」と話す。オープン当初から通っていたという40代男性は「昔は深夜まで営業していて、落ち込んでいる時など立ち寄ってマスターと遅くまで話をした」と振り返る。
6月30日も材料切れのため、夜営業を中止した。自分らしい引き際と話す石澤さんは「引退です。まだ体力があるうちにやりたかったことをしたい。まずは青森県内を1周したい。その後は東北エリア。長く華心にいたので、遠くへ行きたい」と笑顔を見せる。