8月5日に起きたねぷた内部の昇降機による死亡事故を受け、中止となった今年の「弘前ねぷたまつり」だが、参加各団体が8月6日、祭りを納める自主巡行を行った。
8月1日より開幕していた「弘前ねぷたまつり」は、同事故を受け残りの日程をすべて中止した。事故による中止は、今の形態で始まった1958(昭和33)年以来初めて。
ねぷた参加団体の一つ「幻満舎(げんまんしゃ)」は、全団体の中で唯一、担ぐタイプのねぷたで巡行し、電気を使わないろうそくの明かりでねぷたを照らしている。8月6日は、同市の繁華街である鍛冶町を雨の中巡行した。
団員たちは全員喪章をつけ、囃子(はやし)の演奏は行わなかった。「今年のねぷたをやり切りたかった」と同団体の山本和敬さん。巡行後は黙とうをささげ、最後は弘前ねぷたの掛け声である「ヤーヤドー」で締めた。
「必殺ねぷた人」は「弘前ねぷたまつり」に40年以上連続出場し、同市出身の現代アーティスト・奈良美智さんも参加したことがある団体。祭りの中止決定を受け、何かできることがあるのではないかと協議した結果、「来ていただいた観光客に、せめてねぷたの写真だけでも撮ってもらいたい」とJR弘前駅前にねぷたを配置した。自主的な活動にも関わらず、開催関係者が迅速に対応し、許可をすぐに得られたという。
同団体の中川俊一さんは、「2年越しでねぷたをようやく見ることができたという観光客がいた。喜んでいただいた姿を見て、やれることができたのでは」と話す。「毎年ねぷたを巡行しているだけなので、弘前を訪れる観光客とお話しする機会が今までなかった。貴重な体験になった」とも。
ねぷたは祭り最終日に燃やし、その年を締めくくる。「なぬかびおくり」と呼ばれ、炎で清め、昇天させる意味があるという。今年は同行事も中止となったため、各団体はねぷたを格納している「ねぷた小屋」などに集まり、今年最後のねぷたを惜しみつつの見納めとなった。