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弘前の「すずめのお宿」が42年の歴史に幕 感謝と恩返しを伝える

店主の外崎義彦さん(右)と妻の美保子さん(左)

店主の外崎義彦さん(右)と妻の美保子さん(左)

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 日本料理店「おまかせ料理 すずめのお宿」(弘前市桶屋町)が12月31日、閉店する。

店内に設置した閉店を知らせるパネル

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 1982(昭和57)年創業で、懐石コース料理のみを提供する同店。店名は、支えてくれた多くの人や世話になった人たちへの感謝と恩返しの意味を込め、日本のおとぎ話から名付けた。

 店主の外崎義彦さんは旧中里町出身で、青森や弘前の料理店で修業し、27歳で独立。かくみ小路にあるビル2階で日本料理店を始めたが、開業して7年後に現在の場所に移転した。当時のことを外崎さんは「店の雰囲気がいいなと眺めていたら、突然、その店に移転しないかと相談を持ちかけられた。思いは誰かに通じるのだと感じた出来事だった」と振り返る。

 外崎さんは現在68歳。70歳まで続けようと勤めてきたが、開店40年を超えた辺りから閉店を考え始めたという。「6時に起きて23時に帰宅するような毎日。体が悪くなる前に、店もきれいなまま残して引退することを考えた」と外崎さん。9月に店内に掲げた閉店を告知するパネルは、掲出するまで30分以上その場で悩んだという。

 42年の間にはさまざまなことがあった。JR東日本の豪華寝台列車「トランスイート四季島」のディナーを担当したこと、日本料理調理人として弘前マイスターに選ばれたこと、建築家の黒川紀章さんに料理を提供したこともあったという。

 「3世代にわたって利用してくれる常連客がいるほか、開店当初のアルバイトが定年退職し、送別会の会場として使ってくれたこともあった」と外崎さん。「その人の人生の1ページに当店の名前があることがうれしい」と笑顔を見せる。

 コース料理のメニューはいつも提供直前まで決められないという。性別や年齢、アルコールが好きかどうか、来店の際の雰囲気と当日の天気なども考え、その人にその時に合った料理を提供する。「喜んでもらいたいという思いから。直前でメニューを変更することも多く、スタッフはいつもハラハラしていると思う」と外崎さん。

 12月に入り、連日の仕込みのためランチ営業はなくなり、すでに閉店まで予約が埋まり、営業はするが新規の来店対応はできないという。外崎さんは「今も予約の電話が入ったり、来年の予約を入れたいといった相談をもらうことがある。当店が42年続けられたのは、本当に皆さまのおかげ。感謝の思いをこの場でも伝えたい」と話す。

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