弘前の洋菓子店「パティスリーヴェルジェ」(弘前市百石町、TEL 0172-32-1949)が1月、店名を「パティスリーヴェルヴェンヌ」に変更した。
2004(平成16)年3月1日にオープンした同店は、今年創業20年目を迎える。店主の蟻塚あらしさんは「20年という時間は当時生まれた赤ちゃんが成人するような月日。創業当初から目指していた『記憶に残る店づくり』をより深く実現するための店名変更」と話す。
蟻塚さんによると、「ヴェルヴェンヌ」は造語で、ヴェルは「ヴェルジェ」から「ヴェンヌ」は神話の不死鳥から取り、光り輝くとの意味を込めたという。「大変な時代だからこそ、洋菓子店として少しでも心が満たせられるような手伝いができれば」と話す。
蟻塚さんは大学卒業後に専門学校を経て、秋田の洋菓子店で修業した。30歳までに自分の店を持つことを目標に働き、29歳で独立した。蟻塚さんは「県外で働いていたころ、挫折してしまいそうなこともあったが、帰郷した時に見えてきた岩木山に涙があふれてきたことがあった」と振り返る。「幼少期の経験は大切で、いつまでも記憶に残る。そんな誰かの記憶になれる店を目指していたことを改めて考え直し、今回の店名変更は初心に戻る意味だった」とも。
看板商品の「窯(かま)出しアップルパイ」は、創業当初から販売している。「青森の果物を生かした洋菓子店の構想は当初からあり、『ヴェルジェ』はフランス語で果樹園という意味だった。アップルパイは20年前から出しているが苦労の連続だった。最初のころは売れずに配ったこともあった」と蟻塚さん。
蟻塚さんは「店名の変更により、商品や店舗が変わるわけではなく、私自身の思いが変わった。いずれは新商品を作っていきたいが、地域の歯車の一つとしてこれからも根付いていきたい」と話す。
営業時間は10時~19時15分。月曜定休。