三笠屋餅店(弘前市土手町、TEL 0172-32-7590)の故障した餅つき機を12月13日、コンサルティング会社「マトリクス」(早稲田)が修理した。
創業80年以上という老舗で、看板商品「あさか餅」で知られる三笠屋餅店。餅つき機故障の原因は、約20年使っていた「手動式落下餅つき機」の「ゴムコロ」と呼ばれる部分。杵(きね)を持ち上げるための部品で、ゴム部分が摩耗し、うまく力が伝わらないようになったため、杵の突く力が弱くなっていたという。
三笠屋餅店店主の山野隆治さんによると「『ゴムコロ』は消耗品で、最後に取り換えたのは約3年前。餅つき機メーカーからはすでに保証期間外で、ゴムコロの替えはないと連絡があった」と話す。
同餅つき機の臼(うす)は床に固定されており、杵が垂直に落ちて餅を均等に突く仕組み。「最新の餅つき機は全自動式が多く、臼が電動式で人の手を入れない。職人感覚では、三笠屋の餅を表現できないと考えている」と山野さん。「なんとかできないかと相談したのが高松輝賢さんだった」と明かす。
高松さんが経営する「マトリクス」は医療コンサルティング機器を製造販売している。コロナ禍では飛沫対策や靴底に付着したウイルス除去する機器などを開発。新しい課題を解決する機器を作る機会が多くなっているという。
高松さんは「ゴムをライニング(巻き付ける)できる地元業者は知っていたため、すぐに同じものが作れるようになった」と話す。「近年は部品を海外に外注するなど、価格を抑えようとするあまり町工場といった国内でも作れることが知られないようになってしまった」とも。
同日に「ゴムコロ」を交換し、通常通りに稼働を始めた餅つき機。山野さんは「20年前に餅店を継ぐために戻ってきて、手伝い始めてからこの餅つき機とは一緒に付き合ってきた。これからも使い続けていきたい」と笑顔を見せる。
高松さんは「弘前の伝統の味を救いたいと引き受けた。どんな機械でも直せる技術が日本にはまだある。新しい相談も持ちかけられ、引き続きサポートしていきたい」と意欲を見せる。