青森・弘前で現在、シードルの醸造・販売に力を入れる動きが活発化している。
「シードル」は、リンゴを原料とした果実酒。日本一のリンゴの生産地である弘前では、シードルによる6次産業化が進んでおり、弘前市では2014(平成26)年にハウスワインシードル特区に認定されるなど、近年シードル造りが活発化している。
今年度から醸造者・委託醸造者を中心に「弘前シードル協会」が立ち上がった。現在のところ、34の企業や個人などが在籍。醸造について学ぶ場や広報やブランディングを知る普及部といった2つの部門に分かれて活動している。
弘前大学近くにある酒造会社「弘前銘醸」(弘前市富田)は、4月23日、シードル専門のオンラインショップ「青森シードル『ヨリドリ・ミドリ』」を開設した。4代目社長・加藤宏幸さんが「弘前シードル協会」やシードル好きの有志の協力を得ながら立ち上げた。
「新型コロナウイルスの影響で飲食店へのアルコール配達需要が激減し、売り上げも減少。その中で、シードルを飲食店に配達する形態と同様に、オンライン上で販売できないかと考えたのが当ショップを開設したきっかけ」と加藤さん。
ショップの立ち上げに関わった元・地域おこし協力隊の佐々木なおみさんは弘前のシードルはどこで購入できるのかと尋ねられることが多かったという。「各会社で販売しているシードルを購入することはできるが、まとめて買えるような店が少なかった」と佐々木さん。
「ヨリドリ・ミドリ」ではシードル初体験の人向けの「はじめてセット」や「飲み比べセット」など醸造所でまとめたセット商品を用意する。加藤さんは「全国的にまだ認知度は低い。リンゴの生産量日本一の弘前で、シードルでも日本一を獲得することができるように、シードルを盛り上げていきたい」と意欲を見せる。
弘前ローカルベンチャー育成事業「ネクストコモンズラボ(NCL)弘前」のメンバーである中山智さん、未央さん夫妻は4月18日、「HIROSAKI ORANDO」(弘前市百石町)内にシードルやスイーツを提供する「ポム・マルシェ」をオープンさせた。
シードルは弘前産だけでなくフランス産、オーストラリア産など国内外のものを提供している。「リンゴそのもののおいしさを意識した日本のシードルに比べ、海外のシードルは数十種類のリンゴをブレンドしたものが多い。その違いを意識しながら飲んでみてほしい」と未央さん。
中山さん夫妻はコロナ禍以前、毎年ヨーロッパへ旅行してきた。旅行では、地産の酒や地産の食事を楽しむ現地の生活が印象的だったという。智さんは「現地ではシードルが当たり前のように根付いてあり、さまざまな楽しみ方があった。当店でもなじみ深い地元の食材を使用したメニューを用意し、弘前でのシードル文化を発信していきたい」と話す。
弘前シードル協会によると、県内では弘前以外でもシードルの動きが活発化しており、五所川原や平川でもシードル醸造所を立ち上げる動きがあるという。同協会の事務局長・相内英之さんは「銘柄や醸造所は増えたが、同じリンゴの産地でも長野と比べれば、やや出遅れている状況。まずはシードルが地域の人に応援してもらえる身近な地酒になるようにしていきたい」と意気込む。