弘前在住で津軽笛奏者の佐藤ぶん太さんが4月15日、自宅練習用の「鳴らない笛」の販売を始めた。
「鳴らない笛」は、横笛の吹き口の裏に穴を作ることで、空気が通り、音が出ない仕組みとなっている。佐藤さんは「関東圏の生徒から、自宅では音が出せないため練習もできないといった声があり、販売に踏み切った」と話す。
佐藤さんは津軽地方に限らず、全国で横笛のワークショップや海外ツアーも企画する横笛奏者。2011(平成23)年には3742人の笛奏者を集め、合同合奏者数ギネス世界記録を樹立したほか、昨年はニューヨーク・カーネギーホールでライブを行った。
佐藤さんによると、新型コロナウイルスの影響により、9月までの予定が白紙になってしまったという。カーネギーホールのリバイバル公演を7月3日に地元で予定していたが4月16日に中止とした。「ねぶた・ねぷたまつりなどもなくなり、笛奏者だけでなく笛を作る職人たちも被害がある。手をこまねいている場合ではない」と佐藤さん。
「鳴らない笛」は塩ビ管を加工する。水道管などに使う接着剤を使用し、安全面も配慮。ギネス世界記録に挑戦した際に作った笛と同じもので、大工だった父・年雄さんと約4000本の笛を作ったノウハウが生かされている。佐藤さんは「まさか10年近く前の取り組みが今になってまた活用されるとは。今回も父には協力してもらっている」と話す。
販売価格は1,500円。ウェブサイト「ぶん太商店」で取り扱う。3,000円以上の笛を購入することで「鳴らない笛」は進呈。「笛職人を応援する企画でもある。しばらくは続けたい」と佐藤さん。
自宅の寝室を改修し、オンラインレッスンや動画配信ができる環境を整備したほか、佐藤さん一人ではなく、全国の笛奏者仲間のレッスンが受けられるように新しくホームページを立ち上げたという。佐藤さんは「悲観してばかりもいられない。自宅待機が少しでも楽しくなれば」と話す。