弘前の寺院「専求院」(弘前市新町)で5月19日、米国のミュージシャン、トミー・ゲレロさんの全国ツアーライブが行われた。
ゲレロさんは米国サンフランシスコ出身の元プロ・スケートボーダー。1997年にミュージシャンとしてデビューし、日本のテレビCMに楽曲提供やサーフ映画のサウンドトラックを担当するなどの活動を行う。今年5月8日には2年ぶりとなる新アルバム「DUB SESSION」をリリース。同アルバムのジャパンツアーと題し、全国9カ所を現在回っている。
9カ所には大阪、東京といった大都市が選ばれている中、弘前で開催された背景には、セレクトショップ「slow poke」(弘前市南瓦ヶ町、TEL 0172-32-7426)若城徹土さんの尽力がある。若城さんは店の常連客にもゲレロさんの音楽を薦めるほどのファンで、「約20年来の夢がかなった」と話す。
若城さんによると、ゲレロさんがスケートボードチームのメンバーとして映画「ポリスアカデミー4」に出演していたことが最初の出合いだったという。「ミュージシャンとして名前を聞いたが、当時はアルバムを入手できず、再販された時にすぐに買った。それ以来、地元弘前でライブをお願いできないかと考え始めた」と振り返る。
2005年に初めて依頼した時は断られたという。若城さんは「全国ツアーの中に組み込んでもらえれば可能性があるかもしれないと考え、4年前に仙台でのライブがあった。仙台まで来たならとあらためて依頼をし始めた」と明かす。
ゲレロさんとは過去に2度会ったことがあるという若城さん。1度目は2007年にサンフランシスコのカフェで行われたライブで、現地まで足を運んだという。事前に直接メールで確認して、会場でメールしたことを伝えて会話をした。2度目は同じくサンフランシスコで友人とフリーマーケットを歩いていた時に偶然出会った。若城さんが「覚えているか?」と聞いたところ「覚えている」という回答だったという。
ライブは同寺の本堂で行い、270人の来場があり、中には秋田や岩手から駆け付けた人もいた。同寺住職の村井龍大さんとは同級生で、「寺ジャズ」イベントを行ったことがあったほか、「どうせなら面白い場所でやりたかった」と若城さんは明かす。ゲレロさん自身も寺院でのライブは初だった。
ライブ中はステージ脇から常にゲレロさんの演奏を見守っていた若城さん。「来場者の重みで本殿の床が抜けてしまったらとか、近隣住民の苦情があったらといった不安ばかりを考えて楽しむ余裕はなかった」と話す。
「会場に着いたゲレロさんが『アメイジング』と喜んでくれたこと、リハーサルが終わった後、自分だけ会場に残ると言って演奏したり畳に寝ていたりしていたことがうれしかった。振り返ると気持ちのピークはリハーサルの時。泣いているスタッフもいた」とも。
ライブのアンコールでは、デビューアルバム「Loose Grooves & Bastard Blues」から「So Blue It's Black」を演奏した。若城さんは「聞いていた約20年前のころを思い出していた。当時から薦めていた人たちも来場してくれて『よかった』と声を掛けてくれたことにやったかいがあった」と話す。
空港までゲレロさんを送った際、「アメリカに来る時は連絡をくれ」「飲もう」といった会話があったという。「また弘前に呼びたくなる」と笑顔を見せる。
ゲレロさんの全国ツアーは札幌、高松と続き、5月26日の横浜公演で終わる。