弘前市の岩木文化センターあそべーる(弘前市賀田)で5月30日、住民1000人以上の健診データを集める「プロジェクト健診」が始まった。
同市岩木地区(旧岩木町)の住民を対象とした同プロジェクトの健診は、約600項目の健診データを毎年継続収集する。住民は会場で行われている健診を4~6時間かけて回り、200人以上のスタッフが対応する。世界でも類を見ない取り組みと言われ、昨年から文部科学省の推進する「COI(center of innovation)STREAM」プログラムの採択を受け、今年で2年目となった。
リサーチリーダーで弘前大学大学院医学研究科長の中路重之さんは「蓄積した健診データは、認知症などの疾患の予兆や予防法検証などに役立てることができる。最大の強みは600項目以上のデータをひもづけて分析できること」と話す。
中路さんは、最も寿命が短い青森県の「短命県返上」を目標に掲げ、2005年から「岩木健康増進プロジェクト」を立ち上げた。岩木地区住民に対し健康調査や健康指導などの活動を行い、10年間で延べ1万8000人、約360項目の健診データを収集した。「成果報告や健康アドバイスなどを続けたことで生まれた住民との信頼関係が、同プロジェクトの実現につながっている」と中路さん。
現在では参画企業も増え、内臓脂肪測定といった企業がほしい項目の測定も増やしたという。中路さんは「世界的な関心や企業の注目があることはありがたい。今後はデータを使って住民たちの健康増進にどう役立てていくかが課題」と話す。
7月3日には東京の一橋講堂(東京都千代田区)で「超高齢化社会の未来を考える ヘルシーエイジング・イノベーションフォーラム」を開催する。「最新の報告などを発表する場でもあるため、ぜひ足を運んでほしい」と中路さん。開催時間は13時~17時。入場無料。