古くから鬼がいるという鬼伝説と津軽地域最大の百姓一揆と言われる民次郎一揆をテーマにした市民参加型の演劇「鬼と民次郎」が3月23日、弘前市鬼沢地区で上演された。
会場となった市立自得小学校体育館には、初回約280人、2回目約200人の観客が訪れた。劇は、凶作と重税に苦しむ農民を救ったという義民・藤田民次郎が起こした一揆を中心に、古くから鬼沢地区で語り継がれている鬼神伝説を盛り込んだオリジナルの内容。弘前市無形民俗文化財である「鬼沢獅子踊」も劇の随所に盛り込む。終盤には涙をすする声が会場に響いた。
出演者は昨年11月に行われた一般オーディションで選出。演劇経験者も中にはいるが、多くは未経験者。7歳~78歳と幅広い年齢層のキャストとなった。開演前にあいさつした「鬼沢の会」の藤田光男会長は「多くの方に来ていただき驚いている。鬼沢の素晴らしさを知ってもらい、また鬼沢に来てほしい」と呼び掛けた。作・演出を手掛けた畑澤聖悟さんは、青森市内で活動する劇団「渡辺源四郎商店」を主宰する。畑澤さんは「実在した歴史上の人物を、出身地である鬼沢地区でやったことに意味がある」と話していた。
弘前の北に位置する鬼沢地区には古くから鬼がいたとされ、数々の伝説が残っている。一夜のうちに築いたという水路や相撲をとっていたと伝えられる土俵、鬼が腰かけ休憩したとされる大木など。鬼沢では、鬼は優しい神様とされ、同地区にある鬼神社の「鬼」の漢字には角がない。
津軽ふるさと創成劇「鬼と民次郎」は来年も上演を予定している。