青森にある「古遠部(ふるとおべ)温泉」(平川市碇ケ関、TEL 0172-46-2533)が10月1日、宿泊業を再開させる。
秋田との県境近くの山間エリアにあり、温泉愛好家からは「トド寝」ができる秘湯の温泉として知られる同旅館。通うファンが全国にいる。前社長の木村達夫さんは高齢などの理由で昨年から事業継承を考え、今年3月には閉業を予定していたが、5月に事業継承者が見つかった。
事業を継承したのは、後藤正男さんと長井めぐみさん。8月1日から同旅館は2人の共同経営となった。仙台在住だった2人のうち、後藤さんは継承を機に仙台から青森に移住。タクシードライバーだった後藤さんは長井さんに誘われて仕事を退職し、湯守として働くことを決意した。
長井さんは青森が好きで、温泉に通ったり住んだりしたこともあったという。2020年9月に初めて同旅館を訪れ、すぐに常連客になった。「湯の良さはもちろんのこと、店の人だけでなく温泉に通う常連客との交流が生まれ、いつまでも続いてほしいと感じるようになった」と振り返る。
前社長の木村さんから事業継承の話を聞いて、3月に手は挙げたものの、何から手を着けていいのか分からないまま時間は流れ、5月に突然「譲りたい」と指名があったという。長井さんは「いろいろな人から継承したいという話はあったようだが、地域住民や全国にいるファンにこれからも来てもらえるような人に譲りたいということだった。木村さんからの意思はきちんと受け止め、受け継ごうと腹をくくった」と笑顔を見せる。
同旅館は日帰り入浴の営業は続けていたものの、宿泊客の受け入れは6月から中止していた。事業を継承した2人は早速、宿泊施設としての営業許可を改めて申請。9月26日に許可がおり、受け入れの再開をX(旧ツイッター)で報告したところ、10分後には予約の電話があったという。
後藤さんは「まだスタート地点に立ったばかり。建物がかなり傷んでいるため、全面的な改修が必要なので、少しずつ直していく。現在、受け入れているのは素泊まりだけだが、以前のように料理を出せるようにし、多くの人たちに湯の良さを体験してもらえるように続けていきたい」と意気込みを見せる。
宿泊料金は、1泊1人=6,650円(入湯税込み)。予約は電話のみで受け付ける。日帰り入浴の営業時間は8時~20時30分。料金は、大人=400円、子ども=100円。