弘前の歴史的建築物が相次いで受賞や文化財に指定された。
「木村産業研究所」の外観。現在、建物には「弘前こぎん研究所」が入所している
5月20日、「弘前れんが倉庫美術館」(弘前市吉野町、TEL 0172-32-8950)がフランスの建築賞「フランス国外建築賞」のグランプリを獲得した。賞はフランスを拠点とする建築家を対象に、国外での活動をたたえるフランス文化庁認定の国際的な建築賞。弘前れんが倉庫美術館はフランスを拠点に活動する田根剛さんが改修を担当した。
同館は、明治・大正期に建設された「吉野町煉瓦(れんが)倉庫」を弘前市初の公立美術館として「記憶の継承」をコンセプトに改修した。2020年開館。現存するものを可能な限り残したままレンガ建造物の耐震性を高め、シードル・ゴールドの屋根がシンボルとなっている。
21日には「木村産業研究所」(在府町)が国重要文化財に指定された。「木村産業研究所」は、近代建築界の巨匠ル・コルビュジエの下で学んだ前川國男が国内で最初に手掛けた建物。水平を強調した外観など当時のモダニズム建築の特徴があり、建物の歴史的価値が評価された。
弘前の市民団体「前川國男の建設を大切にする会」の代表代行・齋藤幸喜さんは「国の登録文化財から重要文化財になったことは非常にうれしい。今回の指定によって前川建築が注目される新たな機会になり、貴重な遺産であることを弘前市民はもとより、日本中に知ってもらえることは何よりの喜び」と話す。
そのほか、「普門院本堂」(西茂森)が5月20日、15件目の市有形文化財に指定された。現在の森町付近にあったされる茂森山にあった観音堂を、弘前城築城に伴い移した建物で、礼堂(礼拝・読経のための堂)と正堂(住職の居室)からなる。1718年の本堂焼失に伴い増築された礼堂には文政年間以降の参拝記念の墨書が確認されている。
市担当者は指定理由について、「当時の仏教信仰が特定の人間だけでなく一般大衆に広まったことを示す貴重な建築物で、同じような特徴を持つ建物が県内には現存しないことから指定に至った」と話す。
短期間で3つの弘前の建築物が評価されたことに、弘前在住の20代大学生は「普段から生活している町にこんな歴史的な建物があることは知らなかった」と話す。40代女性は「弘前は城下町なので、ほかにももっとあるのではと探してみたくなった」と笑顔を見せる。