提供:ジェイアール東日本企画 制作:弘前経済新聞編集部
弘前駅東西自由通路に2021年4月2日、「津軽ラウンジ」と「BRICK A-FACTORY」が開業します。JR東日本秋田支社と青森県と弘前市は地方創生に向けた「津軽つながる交流都市づくり連携協定」(三者協定)を2018年に締結。JR弘前駅を観光の発信基地とし、地域の交流を促進する事業などが行われてきましたが今回、びゅうプラザ弘前駅があった場所に「津軽ラウンジ」と「BRICK A-FACTORY」が完成しました。
昨年、弘前市中心市街地にオープンした「弘前れんが倉庫美術館」は明治時代からのレンガ倉庫を改修した総合芸術施設です。このレンガ倉庫は日本で初めてリンゴの酒「シードル」を大規模に生産した場所で、敷地内に開業した「A-FACTORY 弘前吉野町シードル工房」は、「シードルを通じて『りんご王国青森』を盛り上げたい」というJR東日本青森商業開発の思いが、リンゴ生産量全国1位の弘前という地でまさに形となったと言えます。
弘前れんが倉庫美術館に併設するカフェ棟内にある「A-FACTORY 弘前吉野町シードル工房」
次に取り組んだことは、観光客が旅の途中に期待を膨らませたり、旅の思い出を振り返ったりできる複合用途の観光拠点(ゲートウェイ)を作ることでした。JR弘前駅内「びゅうプラザ弘前駅」の跡地は、待合室やイベントの開催、情報発信・展示ができるスペースを備える「津軽ラウンジ」と、津軽の産物やシードル、アップルパイなども販売する「BRICK A-FACTORY」となりました。
津軽ラウンジのテーブルや椅子は可変式で使用目的に合わせてレイアウトを変えるという
「津軽ラウンジ」を企画したのは、JR東日本秋田支社津軽地区の職場に所属する若手職員が立ち上げた「津軽つながるプロジェクト」でした。リーダーを務める篠﨑哲平さんは「このプロジェクトは私たち津軽エリアに勤める社員が組織を横断して集まりました。普段は駅の窓口や列車の乗務員としてそれぞれの業務を行っています。年齢や肩書きといった垣根もなく、津軽エリアを盛り上げるという思いで作られたプロジェクトチームです」と話します。
津軽つながるプロジェクトの5人。それぞれの意見を反映させて実現したのが「津軽ラウンジ」
一方、「BRICK A-FACTORY」は、日本のシードル発祥の地ともいえる「A-FACTORY 弘前吉野町シードル工房」の「蔵出し・直送」する生シードルを提供することを最大の売りにしたコンセプトショップです。今年で10周年となる「A-FACTORY」が、東北デスティネーションキャンペーンの開催に合わせ、「津軽の産物・地域文化を発信」する場としてオープンしました。
JR東日本青森商業開発の今みどりさんは「津軽エリア選りすぐりの逸品を取りそろえ、駅から旅の気分を盛り上げるような店づくりに力を入れました」と笑顔を見せます。
「BRICK A-FACTORY」のレジカウンター
「津軽ラウンジ」には3つの機能が備わっています。最大の機能である「待合室」には、リンゴ箱を活用した「リンゴ箱の棚ディスプレイ」やテーブル、リンゴの収穫作業などに使う梯子を使ったディスプレイなど、津軽にゆかりのある内装や家具などを設置しました。トータルのデザイン監修をしたのは蟻塚学建築設計事務所(弘前市)の蟻塚学さん。照明にはブナの木を独自の手法で作るブナコのものを使い、リンゴ箱の棚ディスプレイはキープレイス(板柳町)の姥澤匡柳(まさる)さんが担当。スペース内に展示するリンゴの梯子は木村木品製作所(弘前市)の木村崇之さんなど、津軽エリアで活動するさまざまな人たちが関わっています。
リンゴの形をしたブナコの照明やカウンターテーブルはリンゴ箱の木材を使っている
この関わりの背景には「ONESTORY」という情報発信サイトの存在があります。47都道府県の「ONE=1カ所」の「ジャパン クリエイティブ」を求め、日本各地のプレイヤーや活動を紹介する同サイト。津軽エリアではすでに50以上の人や団体を掲載しました。その取材に「津軽つながるプロジェクト」のメンバーも同行し、地域への理解を深めていったと言います。
津軽つながるプロジェクトのメンバーらは地域で活動するプレイヤーと取材や打ち合わせなどを重ねた
「津軽エリアの特徴は、各分野でさまざまな活動をする人たちが、それぞれつながっていること。他エリアにはない珍しいことで、津軽の強みではないでしょうか。『津軽ラウンジ』の2つ目の機能でもある情報発信は、通勤通学で駅を利用される地域のお客さまや観光にいらっしゃったお客さまが活動するプレイヤーたちへの理解を深める場だけでなく、情報を結び補完できるような場としても活用してほしい」と篠﨑さん。
ONESTORYで紹介されたプレイヤーを深く知ることができるパネル展示
待合室には「ONESTORY」で紹介した「プレイヤー」のパネルを季節ごとに展示します。リンゴ箱の棚ディスプレイには3人、リンゴの梯子には7人。計10人が常に展示予定で、篠﨑さんは「私たちの中でも取材を通じてプレイヤーとの関係が生まれ、今でも交流があります。このような経験を少しでも体験してもらいたい、ただ商品を購入するというだけでなく、その商品の背景にある思いやその人の生い立ちまで知ることができれば」と話します。
取材後の交流からJR社員のこけしを「阿保こけしや」に製作してもらったという
そして最後に紹介する3つ目の「津軽ラウンジ」の機能は、イベントスペースとしての役割です。弘前の四季折々の祭りの時期に自由通路と「津軽ラウンジ」を一体的に活用し、津軽の地元関係団体とイベントを企画し弘前駅周辺の賑わい創出を計画しています。
2階オープンデッキで開催していたコンサート。屋外だったため天候に左右されたが今後は津軽ラウンジでも開催できる
「BRICK A-FACTORY」は「津軽ラウンジ」と併設し、A-FACTORYならではの厳選した津軽エリアの食やお土産・特産物をそろえます。シードルは2つのサーバーを設置し、常に「A-FACTORY 弘前吉野町シードル工房」の生シードルを提供するほか、地産のシードルも一種用意します。もちろん購入も可能。県内のシードル30種以上を用意し、忘れたお土産として、自分用の追加のご褒美としてもその場で購入できます。
「BRICK A-FACTORY」店内。2つのサーバーでシードルを提供するほか、30種のシードルを販売する
アップルパイは地元弘前の人気洋菓子店「ボンジュール」監修による自家製を提供します。その場で焼き上げるアップルパイに仕上げの香りづけは弘前吉野町シードルを使用。ここでしか味わえない風味やスペシャル感をさらに高めてくれます。シードルのほかに、コーヒーと一緒に味わえるセットも用意し、カフェ文化が根付く弘前の魅力を駅にいながら味わえます。
仕上げにA-FACTORY弘前吉野町のシードルを使用する自家製アップルパイ。コーヒーセット(530円)も
そのほか、改札横にある駅売店が「Petit Appli(プチアプリ)」としてリニューアルオープン。毎日の生活サポート機能を強化し、地元の人たちでも気軽に利用しやすいようにしました。厳選された地元食材を使用したカレーやパスタ、弁当などの総菜をラインアップ。店内のデザインはリンゴの赤をポイントに、津軽らしい「こぎん柄」をあしらい、新しい空間として楽しみが膨らみます。
惣菜などを中心に置き、仕事帰りなどの日常使いターゲットにしている
編集後記
新たな拠点として期待が高まる「津軽ラウンジ」と「BRICK A-FACTORY」。四季によって美しい景色を見せてくれる青森・津軽の魅力を掘り下げるだけでなく、そこで活動するプレイヤーを紹介し、地元の人たちも知らなかったような新たな魅力を伝えてくれます。東北デスティネーションキャンペーンが開催され、東北地方の注目が集まる今年。2つの施設が津軽に末長く根付いていくことでしょう。
津軽ラウンジ、BRICK A-FACTORY
営業時間 8時30分~19時00分
アプリーズ弘前駅売店 プチアプリ
営業時間 7時10分~19時30分