「相馬えび等養殖生産組合」(弘前市五所)の手掛ける「オニテナガエビの釣り堀」が現在、例年以上のにぎわいを見せている。
手の長さが体よりも長く、4~5年生きる個体もいるというオニテナガエビのオス
1987(昭和62)年3月に旧相馬村(現弘前市)の「むらおこし事業」の一環として、オニテナガエビ養殖を始めた同組合。現組合長の山崎隆穂さんによると、発足当初10人いた組合員は現在、山崎さん一人という。
山崎さんは「地元の温泉水を活用した、新たな特産品としてオニテナガエビの養殖に着目した。温泉水に地下水を加えて水温を通年約30度の状態に維持し、年間6万匹の養殖に成功した。事業の背景には幼少期を過ごした旧相馬村での思い出があった」と振り返る。
「子どもの頃は近くの田んぼや川にヌマエビやヤマメなどがいて、捕っては食べたり育てたりしていた。特にエビやカニを育てるのが好きだった」と山崎さん。
オニテナガエビは淡水のエビでは大型種で、体長約30センチにまで成長するオスもいるという。「主に東南アジアに生息し、中華料理やタイ料理に使われることが多く、6カ月程度で食用に適する大きさに成長する」とも。工務店とリンゴ農家を経営している山崎さんは農作業がない冬季に養殖を行っているという。
山崎さんによると、オニテナガエビ養殖を行う組合はかつて日本全国に30カ所はあったというが、現在は山崎さんの組合のみという。「温泉水を活用した養殖が功を奏した。機械トラブルによりエビを全滅させてしまったことが30年間で2度あったが、仲間に助けられて今も続けられている」と山崎さん。
「孫が小学生になったのをきっかけに営業を始めた」という、オニテナガエビの釣り堀は今年で9年目。「近年、学校では自然と触れ合うような課外授業が少なく、外で遊ぶ子どもたちも少なくなった。虫や魚を捕ったり、その場で食べたりする機会もなく、釣り堀を作ることで少しでも子どもたちに自然のことを知ってほしかった」と話す。今では県内から団体で訪れる客や外国人も訪れるようになったという。
30周年の節目となり、地元テレビや新聞に紹介される機会が多くなり、現在では例年の2倍以上の集客があるという。リゾート施設「星と森のロマントピア」(水木在家)で提供を予定していた「オニテナガエビ会席プラン」は養殖が追い付かず、10月以降の再開をめどに現在、育てている。
今後については、「(オニテナガエビ養殖に)少しでも関心を持ってくれる仲間が増えてほしいため、来るものは拒まないようにしている。おかげさまで全国から問い合わせもある。自分が助けてもらったように、今度は自分が協力を惜しまない」と笑顔を見せる。
営業時間は9時~17時。料金は、5匹ごと=1,000円、調理代=100円。4月~9月の土曜・日曜・祝日のみ営業する。