弘前の屋台ラーメン店「◯尚MARUNAO(マルナオ)」が9月30日、閉店する。
石沢商会(弘前市高田4)駐車場を中心に夜のみ営業していた同店。2005(平成17)年3月、ラーメン屋台「スタミナ一番」の営業場所を引き継ぎ、神山尚幸さんと妻の由香さんの2人で営業を始めた。
当時、ラーメン店で働いていた尚幸さん。独立を考えるが資金不足のため、ラーメン屋台を出店した。尚幸さんは「屋台ラーメンでやるつもりはなかったが、知り合いや友人たちが手を貸してくれ、テントや営業車が完成した」と振り返る。
軽ワンボックスカーを改造して後部座席部分を調理場とし、テントを張って長テーブルを2つ設置する。尚幸さんによると、「スタミナ一番」の営業スタイルをまねて始めた方法という。営業のスタイルは19年間変わらず、手書きのメニュー看板やテントなども使い続けた。
ラーメンは客から何かを言われても味やレシピは変えなかった。「ありがたいことにアドバイスしてくれるお客さまもいたが、自分が本当においしいと感じているラーメンを提供している自信があった」と尚幸さん。由香さんは「冬の営業は降雪で人が数えるほどしか来ない日もあったが、常連客や皆さまに支えられて続けることができた」と笑顔を見せる。
転機が訪れたのは営業を始めて数年たったある年の5月。尚幸さんの祖母が骨折し、営農していたリンゴ農園に危機が訪れたことだった。リンゴは通年で作業が必要となり、骨折した祖母の代わりに農作業をする人が必要になった。尚幸さんと由香さんの2人が、その年からリンゴの農作業を手伝うようになった。
昼は農作業、夜はラーメン屋台を営業。東日本大震災やコロナ禍といった時節も乗り越えたが、閉店は2、3年前から考え始めていたという。「リンゴ農園を広げ、農作業が増えていった。2人とも50歳を超えて体力的な問題もあった」と尚幸さん。由香さんは「子どもたちが独立し、夫婦2人だけとなったことで、これからのことを考えるようになった」と話す。
19年を笑顔で振り返る2人。由香さんは「いろいろな人たちが通ってくれた。親と一緒に来ていた子どもが成長し、恋人を連れてくるようになり、親となって来てくれることもあった」、尚幸さんは「大変だったこともあったが、あっという間だった」と笑顔を見せる。
ラーメン屋台の魅力について、尚幸さんは「老若男女が喜んでくれる不思議な場」と話す。「もし誰かやりたいという人がいれば、私のレシピやノウハウは教えたい。当店の再開は今のところ考えていないが、来世があるならラーメン屋台はまたやりたい」とも。
営業時間は20時30分~24時。