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「中三弘前店」が突然の閉店 「お別れさせてほしかった」と市民の声も

土手町商店街のシンボルとして親しまれた中三弘前店

土手町商店街のシンボルとして親しまれた中三弘前店

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 「中三(なかさん)弘前店」(弘前市土手町)が8月29日、閉店した。

閉店の知らせが張り出されている正面入口

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 8月30日は土手町商店街のシンボルが突然閉店したことを惜しみ、店頭を訪れる地元住民の姿も見られた。

 中三は1896(明治29)年に五所川原で創業した、青森県を代表する老舗百貨店。中三弘前店は1962(昭和37)年に開業した。地下フードコートで販売するみそラーメン「中みそ」は「弘前のソウルフード」の一つとして知られる。1995(平成7)年に大規模改装した現店舗は、建築家の毛綱毅曠(もづなきこう)さんが設計を手がけ、独創的なデザインが中心街のランドマークとして地元民に親しまれてきた。1970年~80年代の土手町商店街の最盛期には百貨店やファッションビルなど大型商業施設が6館建ち並んだが、中三の閉店により最後の1館の灯が消えることとなった。

 中三は北東北エリアで5店舗を展開したが、2011(平成23)年に経営破たん。民事再生手続きを経て、東京の投資ファンドが全株式を取得。2015(平成27)年には全株を「MiK(ミック)」(青森市)が引き継ぎ、同社の子会社として再建を図ってきた。以降は弘前店と青森店の2店舗を運営していたが、青森店は施設老朽化などにより2019(平成31)年4月で閉店した。

 弘前店は2023年、8月期に2億2200万円の営業損失を計上するなど直近3期は多額の赤字経営だった。今年4月には、中核テナントだったジュンク堂書店を閉店。8月28日は棚卸しのため16時で閉店、29日を臨時休業すると告知していたが、同29日、同社は破産と事業停止を発表。中三の屋号としては128年、弘前店としては62年となる営業の歴史に幕を下ろした。

 地下にテナント入居していた「銘茶の玉雲堂」の社長・渋谷託弥さんは8月29日にユーチューブ公開した動画内で、「お中元やお盆といった今夏の商戦期に商材がそろっていない」などの違和感を挙げ、「今月31日で(テナント店舗の)撤退を決断していた」と説明。「スタッフ総出で最後にお客さまを迎える準備していたが、最終営業日を待たずに閉店することになった。驚きだし、憤りもある。お客さまとの接点が失われてしまったことが残念」と話す。中三弘前店近くにある「カフェ・ジーバ」店主の成田久子さんは「中三が閉店したからか、客入りが良くない。これから土手町はどうなってしまうんだろう」とつぶやく。

 翌30日、弘前店前の人通りはまばらながら、正面入口で足を止め、閉店の張り紙を見つめる地元民の姿があった。家から徒歩5分という女性は「街中に住みながら買い物難民になってしまう。土手町に1館残ったデパートとして頑張っていたのに残念」と肩を落とす。自転車を正面入り口に乗り付け、店内の様子をうかがっていた男性は「閉店セールもなくて本当に急で驚いている。(9月29日に閉店する)イトーヨーカドー弘前店と同じく思い入れのある施設だから、こんな形ではなくきちんとお別れさせてほしかった」と話す。

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