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弘前の喫茶店「ノン・ノン」、40年の歴史に幕

喫茶店「ノン・ノン」のオーナー・松村博正さん(67)。「開業した当初は津軽弁に苦労した」と笑う

喫茶店「ノン・ノン」のオーナー・松村博正さん(67)。「開業した当初は津軽弁に苦労した」と笑う

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 弘果弘前市場内にある喫茶店「ノン・ノン」(弘前市末広)が10月31日、約40年続いた営業に幕を下ろす。

「10月31日に閉店となります」と告知した入り口の貼り紙

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 同店のオーナー・松村博正さん(67)は鳥取県出身。東京・銀座の不二家で働き、弘前市出身の奥さんと知り合う。弘前に移住した1972(昭和47)年には、西弘地区に喫茶店「ノン・ノン」を開業させ、東京での経験を生かしてピザやスパゲティなどを提供した。当時はまだコーヒーが70円だったが、1日10万円を売り上げた日もあった。

 「とにかく働きました」と振り返る松村さん。16時30分に就寝し、24時30分には店で仕込みを始める。店内のメニューだけでなく、同市場内で働く従業員に配る弁当も作った。「同じ人に配る弁当なので同じおかずは出せない」と毎日メニューを考え、多い時は1日60~70個の弁当を作ったという。

 40年間の中でさまざまな出会いもあった。常連客に誘われ、30年前から高校野球の審判員を務めるように。松村さんは「体格がいいからという理由だけで誘われた」と笑う。野球のルールすら知らなかったが、店のアイドル時間などを利用して勉強した。現在も続けている天ぷら製造と卸売業も客からの誘いで始めた。

 同市の喫茶文化の発展にも貢献。レストラン「セーブル」(松森町)や今は閉店した喫茶店「スワン」(土手町)は松村さんが立ち上げから協力したという。提供メニューを考え、入り口に展示する食品サンプルも作った。松村さんによると、市内だけでも数10店舗の喫茶店やレストランに関わったという。

 「ノン・ノン」で最も多く売れたメニューとしては、鍋焼きうどん(600円)を挙げる。同市場内に移転した当初は、喫茶メニューのみと限定され、トーストやサンドイッチといった軽食しか出せなかった。ところが弘前中央青果株式会社の創業者で故・大中正元さんに「鍋焼きうどんはないのか」と言われたことをきっかけに、提供するようになった。「それが一番売れるメニューになったことは感慨深い」と話す。

 松村さんは今年の4月から酒処「夢泉乃」(泉野)を開業。自宅にアットホームな居酒屋を作ることが長年の夢だったといい、「ノン・ノン」を閉店させた後は、居酒屋のマスターとして店に立ち続ける。「75歳までは現役で店に立ちたい」と松村さん。「ノン・ノン」については「もし継ぎたい方がいれば相談しに来てください」とも。

 営業時間は5時30分~14時。日曜・祝祭日定休。

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