津軽三味線奏者の初代・高橋竹山(ちくざん)のドキュメンタリー映画「津軽のカマリ」が11月3日、青森県内の劇場2館で先行上映される。
初代・高橋竹山は国内外で評価され、「津軽民謡の父」と呼ばれた成田雲竹(うんちく)の伴奏者として各地を興行し、「りんご節」「十三(とさ)の砂山」といった民謡に三味線曲を編曲したことから津軽三味線を全国に広めた第一人者と言われている。1910(明治43)年青森県東津軽郡中平内村(現・平内町)生まれ、1998年に87歳で他界。現在は二代目・高橋竹山が襲名している。
監督した映画作家・大西功一さんは20年前に青森を訪れたという。「冬に十三湖を目指し、旅をした。雪景色や浜辺に打ち上げられた廃船などが印象的だった」と振り返る。2011年公開の「スケッチ・オブ・ミャーク」を完成させた後、同作を構想。初代・竹山の弟子たちが立ち上げた竹伸会の協力や孫の高橋哲子さんに制作を快諾されたことから2015年春から撮影を開始したという。
撮影期間は約2年で、総撮影時間は200時間にも及んだ。編集には約1年を費やし、亡くなる前日のステージの映像や当時の音源などを取り込み完成。大西さんによると、タイトルは初代・竹山がよく使っていた言葉「津軽のカマリ(津軽弁で匂いの意味)」に由来しているという。
大西さんは「世の中のどん底を体験した初代・竹山の演奏は『普遍の音楽』で、津軽の風土や人間の本質を表現しているのではないか」と話す。「特に若い人たちにぜひ見てほしい。初代・竹山の演奏や生き方から何か感じてもらうことがあればうれしい」とも。
先行上映は青森松竹アムゼ(青森市緑)とシネマヴィレッジ8・イオン柏(つがる市稲盛)で行う。青森松竹アムゼでは公開前日の11月2日に二代目・竹山が公開を記念した演奏会を開く。初日となる3日には大西さんと出演者らによる舞台あいさつをそれぞれの劇場で予定している。
上映時間は1時間44分。