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【調査】弘前にある「あの地球儀」について。どこにあったか覚えていますか?

大きな地球のオブジェ大きな地球のオブジェ

読者から弘前市神田にある大きな地球儀を調査してほしいと相談がありました。確かにあります地球儀。Googleストリートビューでも確認できるこの地球儀は、一体なのでしょうか。調査してみると、弘前の意外なことにも気づきました。

道端にある謎の地球儀

その地球儀は、国道7号線と北大通りの立体交差点から北に進んですぐのところの道端にあります。大きさは直径4.2メートル。繊維強化プラスチックのFRP製で鉄骨が入っているため、だいぶ頑丈に作られています。今作ると数千万円するとも言われています。重さもなかなかで、関係者の話によると数トン。ムー大陸が描かれているという噂もありましたが、確認したところ、それらしいものは描かれていませんでした。

直径4.2メートルの地球の模型直径4.2メートルの地球の模型

大陸のようなものも描かれているがよくわからない大陸のようなものも描かれているがよくわからない

所有する会社と運び出す貴重な写真

現在、地球儀を所有するのは建設・設備工事業「旭組」。社長の藤田厚治さんによると、地球儀は先代の社長が譲り受けたもの。藤田さんは地球儀がもともとあった弘前市親方町のビルから運んだことを覚えていました。3階のビル屋上にあったその地球儀を運び出す作業はかなり難しかったようで、大型トラック2台で深夜から始めましたが、多くの人たちが出勤する時間までかかってしまったとか。当時の写真が残っていました。

当時西目屋村のダム工事に使っていたクレーン車を手配したという当時西目屋村のダム工事に使っていたクレーン車を手配したという(写真提供=ツシマ理容室)

作業は深夜から行われたが出勤時間まで延びてしまった(写真提供=ツシマ理容室)作業は深夜から行われたが出勤時間まで延びてしまった(写真提供=ツシマ理容室)

ちなみに旭組が地球儀を手に入れた理由は、自社の屋上に設置しようとしたからとのこと。しかし、その計画は頓挫し、現在のところに放置されたままになってしまったようです。

地球儀を作った会社と社長の願い

地球儀があったビルの場所は現在、マンションが建てられており、その形跡は何も残っていません。その場所にはかつて「手形のコーナン」と呼ばれた「株式会社コーナン」がありました。会社の創立は1949(昭和24)年。商業手形割引や商工ローンなどの融資が主な業務で、戦後間もない頃から中小企業向けの金融機関として地域経済に貢献しました。青森や八戸、秋田にも支店を出すなど会社は大きく発展。しかし、金融危機や景気後退などの社会情勢で、2008(平成20)年に倒産しました。

親方町の通り沿いにあった「コーナン」のビル親方町の通り沿いにあった「コーナン」のビル(写真提供=高橋勇蔵さん)

3階立てのビルの屋上に地球儀は設置されていた3階立てのビルの屋上に地球儀は設置されていた(写真提供=高橋勇蔵さん)

地球儀が設置されたのは1989(平成元)年7月。当時の新聞記事には、地球儀は会社の広告塔として、夜はライトが当てられ、日中は回転していたと書かれてありました。「青い地球」と命名されていたようで、設置した理由は、環境破壊や自分たちが住む地球のことにもっと目を向けてほしいという思いから。地球儀の前には「青いままの地球を子孫に」と掲げられています。コーナンの社長だった高橋長夫さんの熱い思いがあったようです。

調査が難航したワケ

地球儀は全国放送のワイドショーにも紹介されたこともあったようです。中三弘前店のシンボルでもある「屋上オブジェ」とこの地球儀を見にくる観光客もいたといった証言もありました。しかし、地球儀は2009年11月に撤去され、現在は人々の記憶にうっすらと残っています。そして、調べれば調べるほど「記録」にはないことが分かりました。

地球儀が乗る前の外観写真中三弘前店の屋上オブジェ。縄文土器をイメージした。 1995(平成7)年の改修時に設計された

理由の一つに写真素材の少なさがあります。例えば、東北初の本格的な鉄筋コンクリート造百貨店「かくは宮川」は、解体されて50年近く経っているにも関わらず、その写真は多く残っています。その後に建てられた「ハイローザ」の写真は意外と少なく、皆さまの「記憶」にはありますが「記録」はあまり残っていません。

地球儀が乗る前の外観写真地球儀が乗る前の外観写真(写真提供=高橋勇蔵さん)

今回の地球儀に関しても同じでした。「あった」と覚えがある人は多くいましたが、地球儀があった時代の写真を持っている人は少なく、いつ設置されたのかを覚えている人もほぼいませんでした。1990年代の土手町や鍛冶町、その様子を残した「記録」は意外とないのです。もし、当時の写真などをお持ちの人がいましたら編集部までご連絡ください。

どうなる地球儀の今後

地球儀を所有する旭組の藤田さんにお伺いしたところ、欲しい人がいれば無料でも譲りたいとのことでした。過去に何度か譲ってほしいという相談はあったようですが、その輸送料だけでも高額となるため、諦めてしまうようです。

運ぶだけでも数十万するようです運ぶだけでも数十万円するようです

本当に考えなくてはいけないことは実はほかにありました。中三弘前店のシンボル、縄文土器のオブジェです。今後、残ることが一番うれしいとは思いますが、なくなってしまう可能性が大いに考えられます。その時、私たちに何ができるでしょうか。20年、30年経った後でも覚えていられるような「屋上オブジェ」にしたいものです。そのためには「記憶」だけでなく、「記録」として残していくことも大切なのではないでしょうか。

生成AIによるイメージ画像。弘前駅に置いてもみてもおもしろいかもしれません生成AIによるイメージ画像。弘前駅に置いてもみてもおもしろいかもしれません

取材協力

株式会社旭組
株式会社第一空調
弘前商工会議所
御菓子司 旭松堂
月刊『弘前』(有限会社北方新社)
ツシマ理容室
高橋勇蔵さん

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